5、調理用ストーブ:通常、キャンプで調理するならガスボンベタイプが良いが…
好んで海外辺境へ取材に行くカメラマンとは言え、いわゆる冒険家とは違うので、基本は人里の近くで取材をしている。なので自分で調理をすることはあまりない。しかし1~2泊程度の野宿の可能性を無視はできないので、アウトドア調理用のストーブを持参することは多い。
キャンプ用のストーブにはいろいろな種類があるが、特に燃料によってのジャンル分けが重要だ。キャンプで調理するなら、やはりガスボンベを使うタイプが一番便利だろう。ガソリンや灯油、アルコールなどに比べ、着火も消火も一発だし、火力調整も自由自在。気楽に加熱調理をスタートできる。
しかし、ガスボンベは飛行機での持ち運びができない。空路移動が必要な海外取材や、国内でも離島への取材などでは、現地で自分のストーブに適合したガスボンベが買えるかどうかが重要なポイントになる。だが大抵の場合、現地で買えるかどうかなど事前に情報が得られず、規格が合ったボンベがないことも多いのだ。
そこでガソリンストーブが必要になる。なぜガソリンか。それは世界中でどこでも必ず手に入るからだ。どんな奥地の小さな村でも、いや奥地だからこそ、ガソリンは必ず備蓄されている。
ガソリンストーブも今は色々と便利な製品が出ているが、私がオーストラリア自転車一周に旅立った頃は、選択肢はほとんどなかった。その少ない選択肢の中で、迷いなく選んだのがMSRのウィスパーライトだ。
当時の価格は忘れてしまったが、現行品でいえば2万3000円ほど。アメリカの登山用品メーカーMSRを代表するこのストーブの最大の魅力は、使用する燃料の質を選ばないこと。「キャンプ用のホワイトガソリンしかダメよ」なんて甘いことは言わないのだ。そこはさすがアメリカ製。どんな山奥のオンボロガソリンスタンドの、いつ精製されたのか怪しいガソリンでもしっかり燃焼してくれ、詰まることもない。これは本当に素晴らしい。
しかし弱点もある。いや弱点ばかりといっても良いかもしれない。まず着火が難しい。プレヒートが必要ですぐにお湯が欲しい時でも、なかなかスタートしてくれない。そして火力調整が絶望的に難しい。いや出来ないといっても良いだろう。消えてるか、フルパワー強火かのどっちかなのだ。これで米が上手に炊けたら一人前だろう。私ができるかって? もちろんオーストラリアの砂漠で炊き込みご飯を堪能したのだから、間違いはない。