アメリカでは2歳から「同意」について学ぶ
ふらいと 同意は今日のテーマである小児被害加害にも深く関わるテーマですね。まず本題に入る前に、“小児“の定義について説明を補っておきましょうか。日本の小児救急などの現場では、15歳までを小児としています。実際にはワクチン接種などもあるので、小児科には15歳以上の高校生も来るんですが、表立っての区切りは15歳ということです。小児科医と言っても新生児から思春期まで診るので、思った以上に幅広いです。
内田 アメリカでは18歳で成人なので、医療面でも18歳未満は親の同意が必要で、18歳以上は自身の同意で治療を進めていく形になります。ただ、これは法的な同意であって、医療的な同意のインフォームドコンセントとは必ずしもイコールではありません。
医師は医療行為に関するリスクとベネフィット、推奨する治療法などを子ども自身にも説明して、子どもからの希望も聞きながら、次のステップへの同意を得るプロセスも経ます。ちなみに新型コロナワクチンの接種に関しては、12歳以上であれば親の同意なしに受けられますし、薬物中毒の治療や避妊に関しても同じです。
ふらいと 日本では16歳以上は新型コロナワクチンも、HPVワクチンも親の同意は必要ないです。15歳以下は保護者の署名が必要になるので、年齢的な区切りについてはアメリカと日本では少し違いますね。
内田 一方で医療的な同意を離れた同意教育はどうでしょうか。これは本にも書きましたが、私の息子たちが行った保育園でも、2歳ぐらいから「同意」について教えられていました。それは性的同意でもなければ、医療的な同意でもなく、人間関係の中で自分の意思を表明すること、相手の意思を尊重することを学ぶものでした。
例えばおもちゃで遊んでいて、お友達に「これ貸して」と言われたときに、イエスであったら貸してあげるわけですが、「いまはダメ」というノーの答えであることもあって、そのときは、お友達は違う遊びを選択しなければならない。でも、それでいいわけです。答えはイエスであってもノーであってもよくて、そして相手の答えがイエスでもノーでも、それを尊重して受け入れる、という教育が小さいときからされているんですよね。
私はそれこそが性教育の基本の「き」で、その同意教育なくしては、例えば中絶についてもセックスについても、性教育は片手落ちになると思います。