会長を辞めたのは企業の新陳代謝を促すため
高橋 そこで番組のテーマですけれど、どうしてパソナを辞められたんですか?
竹中 タイミング的に最初は5年だけと言ってたんです。でも、5年やったときに、もうちょっと頑張って10年やろうかと。それで10年やって68歳でしたから、じゃあキリのいいところで70歳まであと2年ということで12年になり、それが13年になって、ようやく区切りがつけられたということです。
理由としては、企業も新陳代謝が大事ですから、次の若い人が育ってきてほしいというのが一つあります。私のように外から入る人間は、やはり新陳代謝しなければいけないと思っています。たとえば社外取締役の場合、一定期間長くいると独立した社外取締役と認められなくなってきます。だから、新陳代謝することに意味があって、他の取締役と入れ替わって初めてその企業の活力が出てくると思うんです。
今回、コロナ禍の中でようやく業績も回復してきて、それなりに足腰も強くなった。だから若い人たちに引き継げると思って踏み切りました。
高橋 普通の人は、一度会長をやると辞めたくなくなるじゃないですか? なのにサクッと辞められたから、すごいなと思いました。
竹中 私はね、若い頃からたくさんの老害を見てきたんですよ。老害って本人は分かってないと思うんですけれどね。人間は年齢とともにいろいろと経験値が上がって、どんどん能力が備わってきます。でも、その一方で硬直性も出てきて、別の意味で能力が下がってくるところがありますよね。自分ではそれは気づきにくいんですよ。
“老害”になりたくないから議員も早期辞職した
竹中 自分1人でできる仕事はいくつになっても続ければいいと思うんです。たとえば芸術家とか、音楽家とか、作家とか、そういう1人でやる仕事はいいんですけれど、組織をまとめてたくさんの人を巻き込むような仕事は、一定の年齢になったら退くべきだと思います。自分はまだやれると思っていても、周囲から見ると老害だということになる。それをね、やはり自分で早めに判断しなきゃいけないと考えていたんです。
もう70歳を超えましたから、早めに判断しようと。それが今回の機会になったわけです。ただし、その一方で成田悠輔(経済学者、イェール大学助教授)さんみたいに、「一定の年代になったらみんな老害だから辞めろ」というのは暴論ですよ。これは年齢による差別ですから、“女性だからダメだ”というのと同じ論理です。人によってすごく差が出ますからね。