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ブルガリアのヨーグルト事情

 そんなブルガリアでは、人々はヨーグルトをいったいどれくらい食べているのだろうか? ひょっとして、日本生まれの商品から日本人が勝手に「ブルガリア=ヨーグルト」というイメージを作り上げているだけで、実は大して食べていなかったりしないだろうか。

 確かめるために、首都ソフィアにて、現地の方の買い物についてスーパーに行ってみた。

 乳製品コーナーに行くと、目に入ったのは壁一面のヨーグルト。写真のヨーグルトは一人分のカップに見えるけれど、400グラムのファミリーサイズだ。ローカル企業各社のパッケージが並び、日々の生活にヨーグルトが欠かせないものになっていることを感じる。

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 一番多いのは牛乳で作られたヨーグルトだけれど、ヤギや水牛の乳で作られたものもある。「せっかくだから」といくつか選んで買ってくれたものを食べ比べると、ヤギのものは独特のにおいと酸味があり、水牛のものは脂肪分が多く濃厚な味わい。いろいろな味わいがあっておもしろい。「どのヨーグルトが一番好き?」と尋ねると、「料理に使うなら断然牛のが使いやすいけれど、そのまま食べるなら水牛かな。濃くておいしい」と教えてくれた。

©AFLO

 ブルガリア人のヨーグルト消費量を数字で見てみると、一人あたり年間29キロ 。日本人は約8~10キロとされているので、約3倍も食べていることがわかる。

 供給側の事情を見てみよう。世界の生乳はヨーロッパで多く生産されている(図1)。これには乳牛は暑さに弱く、また放牧で飼育する場合には豊富な草地のある土地が向くという事情がある。余談だが、かつてブルガリアは牛乳より羊乳の生産量のほうが多かった。

 

 羊は、エーゲ海までの大規模な移牧に向いており、また羊肉・羊乳・毛皮・羊毛と、生活に必要なあらゆるものを与えてくれるからだ。しかし、木綿や化学繊維が普及する中で毛皮と羊毛は著しく需要が低下し、羊肉や羊乳もくせがあるため好まれなくなっていった。

 代わって台頭したのが牛。羊よりはるかに搾乳量が多くて安く生産でき、大規模で集約的な酪農に向いていたのだ。酪農が商業的になるにつれて、家畜も変化したといえるだろう。

 そういった変化はありつつも、酪農は依然として土地に馴染んだ重要な産業。冷涼な気候を有したブルガリアは、本当にヨーグルトの国だったのだ。