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「車間距離を広く取る車」は渋滞を吸収する

 反対に、車間距離をつねに広く保ち、一定の速度で走行を続ける車は、一見マイペースに進んでいるようでも、実は渋滞緩和に貢献している。東京大学先端科学技術研究センターとJAFが小仏トンネル付近の渋滞で行った実証実験においては、混雑時にも車間距離を広く保つ「渋滞吸収車両」の存在によって、後続箇所の平均車速が回復する効果が確認されている。

 渋滞吸収運転のためのポイントは、車間距離を取りながら、余裕のある加減速操作をおこなうことだ。前のスペースに割り込まれても再度車間距離を取りなおし、混雑地点に差しかかる際にも急ブレーキを避けながら、ゆっくりと減速していく。これにより、後続車の減速もゆるやかになり、ブレーキの回数も少ないまま、じわりと進んでいくペースが形成されるわけである。

 混雑時にはとくに、前のスペースに割り込まれないよう車間距離が短くなりがちだが、焦りや苛立ちを抑え、余裕ある運転を心がけることが混雑緩和につながっていくのだ。

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 最近では前走車との距離を自動で調整するアダプティブクルーズコントロールを搭載した車も増えているので、車間距離と速度の制御は基本的に車側に任せてしまうのも手だろう(メーカーと車種によってはブレーキのタイミングが遅いものもあるので、一概には勧められないが)。

渋滞時の合流は「車線の先端」で

 そのほかにも、実証実験によって効果が確認されているにもかかわらず、あまり普及が進んでいない交通マナーとして、「ファスナー合流(ジッパー合流)」がある。これは合流ポイントが混雑している際、合流側の車両が「車線の先端部」で1台ずつ交互に本車線に加わっていく方法であり、NEXCO中日本の実験によって混雑緩和効果が確認されている。

 ところが、車列の先の方で合流することに対して、「ズルい」という印象を抱くドライバーは依然として多く、合流車線の手前側に合流ポイントが生じているケースが散見される。結果、合流ポイントが車ごとにまちまちになり、ブレーキを踏む頻度が増えて混雑が悪化してしまう。周囲と違う動きをすることに抵抗のあるドライバーもいるだろうが、なるべく先頭での合流を心がけたいところだ。

 渋滞吸収走行もファスナー合流も、多くのドライバーの「直感」とは反する走行法である。まわりの雰囲気に流されず、適切なペース、適切なタイミングで運転操作をおこなうことが、結果的に渋滞の緩和につながり、全体としての利益に貢献することになる。

 反対に、焦りや苛立ちは車内の雰囲気を険悪にするばかりか、渋滞を悪化させる運転にもつながりやすい。事前の下調べや車載品の準備、また十分な休憩によって、つねに心に余裕をもてるようにしたい。

©AFLO