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「怠惰であれ!」――“ガチ三流”エンジニアを生まれ変わらせた“誰でもできる生産性爆上げのスキル”

「怠惰であれ!」――“ガチ三流”エンジニアを生まれ変わらせた“誰でもできる生産性爆上げのスキル”

2023/10/27

source : ライフスタイル出版

genre : ライフ, 社会, 働き方

note

30歳過ぎて検査を受けたらADHDと診断される

――幼少期からいち早くプログラミングの魅力に目覚めていたんですね。

牛尾 でも僕は子供の頃からなにをやっても要領が悪く、プログラミングもたいして書けなかったし、運動も勉強もさっぱりできませんでした。努力しても報われないから、ずっと自己肯定感が低かったですね。

 社会人になってからは、プログラマ職希望で大手Sierに入ったのに営業職に回されたので、昼間営業に行ったあと自主的に夜12時くらいまでUNIXのワークステーションを触る日々でした。それでも実力はさっぱり身につかず、僕はなんでこんなにも不器用で、記憶力も弱いんだろう……と悩んでいました。

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 自分のあまりのポンコツさ具合に、30歳を過ぎた頃きちんと検査を受けたら、ADHD(注意欠陥・多動性障害)と診断されました。努力が足りないと自分を責め続けてきた人生に回答が与えられ、半分救われた気持ちになりました。あとの半分は、哀しいけれど、受け入れるしかないという諦めですが。

 

アジャイルを徹底的に研究し、コンサルタントとして普及

――ADHDという特性が大きな壁として立ちはだかったわけですね。

牛尾 ところがちょうどその頃、アメリカ発の「オブジェクト指向」というプログラム開発手法に出会ったんです。そのコミュニティから後に「アジャイル」と呼ばれる先進的な手法が生まれてくるのですが、日本の開発法と180度違って衝撃を受けました。

 日本では「ウォーターフォール」といって、最初に要件を決めて、設計をして、紙でキングファイルを作成して、その内容に沿ってプログラムを書き、テストして、リリースするやり方です。でもこれは、要件定義に半年、設計でキングファイルを書くのに1年、やっとプログラムを組み始めても、さまざまな問題が生じる度に進行が止まるという、非効率の極みでした。しかも「設計に沿って書くだけのプログラミングなんて、誰でもできる」という技術者軽視の風潮が蔓延していた。

 一方アジャイルは、ソフトウェアを機能ごとに小さく分割し、「要件定義・設計・テストを行き来し→リリース」を短いサイクルで繰り返していく開発法です。チームの主体的な決定権が強く、変化に即応してすぐに修正できる。「人は愚かで失敗する生き物だし、最初にすべてを予測するのは難しい」という前提に立っていて、非常に合理的です。このやり方なら自分もできると思って、徹底的に研究し、独立してコンサルタントとして普及に務めました。