復旧現場の実情
道路啓開が行われた後の道路は、よりスムーズに多くの車両が通行できるように、応急復旧が行われ、その後、時間をかけて本復旧が進められる。能登半島地震の被災地では道路の応急復旧が進んでおらず、それが渋滞の原因になっているという状態だ。
念のため申し添えておくが、現場は精一杯頑張っている。土建業者さんたちが、休む間を惜しんで作業を続けている。自治体や地方整備局の職員さんも同様だ。多くの人が困っている現場で、奮起しない人などいないだろう。しかし現実として、応急復旧が必要な現場の多くは手つかずのままなのだ。
今回、取材のため能登半島内を2日間で400kmほど移動したなかで遠方から駆け付けた電力会社の作業車を非常に多く見かけた。携帯電話の基地局が被災した現場では、移動式の基地局と電源車の組み合わせで展開し、停電が続いている能登半島の末端部まで電波が届くようになっていた。それに対して、数が非常に少ない印象を受けたのが道路復旧関係の車両だ。
現地入りした13日は降雪による悪天候で多くの現場が止まっていたという事情はあったが、翌日は好天に恵まれていた。しかし、移動中に見たところ、応急復旧が必要と思われる箇所はざっと100以上あるのに対して、稼働している現場は10箇所に満たなかった。
報道によると、七尾市内の建設会社は発災後いつでも出動できる状態だったが、いつまで経っても県から発注がこず、勝手に道路を直すわけにもいかないと困惑していた。また、東海地方のある建設会社の関係者から聞いた話では、これまで東日本大震災、熊本地震では発生直後に出動要請がきたため、今回も1月2日から出動できる態勢を整えていたが、今日に至るまで要請がないという。
災害派遣の経験がある建設会社の関係者は、要請がこない理由を推測し、予算の問題を挙げた。このような非常時とはいえ、県の担当者としては通常の予算額をはるかに上回る工事を発注するのは難しいだろう、というのだ。