──どんなところが違うんですか?
BossB 日本の大学英語の大きな目標は「論文を書けるようになること」です。私のライティングの指導も厳しいことで有名なようですが(笑)、私は英語よりも、言語とは独立した「論理の立て方」を中心に教えます。英語のスペルや文法などは、ChatGPTに直してもらえばいいのだから。
あと、日本人が不得意とする「発信」のスキル向上にも力を入れています。恥ずかしがらずに自分の意見を言う、自分にしかない自分のよさをアピールする、など。聴衆の前でパフォーマンスをして、自分のストーリーに引き込むにはどうすればいいか、映画を見て学んだり、留学生にインタビューしたり……という具合です。
──大学生は、その授業を楽しんでいますか。
BossB 最初はめちゃくちゃ慎重ですよ。でもこれは、学生だけじゃなくて、日本人全体の特徴かもしれない。「みんなの前で、何のツールにも頼らず、素の自分の力を見せる」ことへの恐怖心が、すごく強いですね。
そもそも、私が日本語で学生に質問しても、手が挙がらない(笑)。指名しても、答える前に「比較されたくない」「変なことを言って間違えたら恥ずかしい、嫌だ」と思ってしまう。そこを破壊したい。
──その壁は厚そうですね。
BossB 簡単には壊せないです。多くの学生は、「AはBである」のような回答はできても、自分の考えを表現するのが下手。それは羞恥心、恐怖心がフタをしてしまっているからです。
だけど、間違うのは当然なんですよ。そして、失敗を重ねるほど、その後は「なりたかった自分」に変わっていきます。私の経験からも周りの学生を見ても、絶対にそう。だから、どんどん失敗して間違えるしかないです。
「私のような人間を雇っている時点で、信州大学は…」
──受験制度を破壊したいと言いつつ、大学の教員でいることに、窮屈さを感じませんか?
BossB それはないかな。まず、私のような人間を雇っている時点で、信州大学はそこまで保守的ではないと思います(笑)。信大の偉い先生方は寛容ですし、私は自分がやりたい授業や研究ができているので。
受験制度についても、私はいろんなことを「おかしいんじゃないか」「考え直したほうがいいのでは」と言っていますよ。でも、周りの皆さんが私と同じ考えじゃないことはわかっているので、様子を見ながらちょこちょこ……という感じ。