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「ムショで生活した方がマシ」“前科11犯の70代”に会ってわかった「高齢犯罪者の更生」がなかなか進まない理由

『無縁老人』より #1

2024/02/18

genre : ライフ, 社会

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 鳥取刑務所は、実刑期が10年未満で、犯罪傾向の進んでいる男性を収容することになっている。端的に言えば、犯罪の内容は窃盗などで軽いが、長期間にわたって何度もそれをくり返す受刑者が多いということである。

年々増加する「高齢者の受刑者」

 鳥取刑務所に赴いた私に話を聞かせてくれたのは、庶務課長の梶山勉氏(仮名、52歳)だ。梶山氏は受刑者の特徴について次のように語る。

「うちは鳥取県にある唯一の刑務所ですが、受刑者の出身地でいえば、県外の方が多数なんです。大阪、兵庫、岡山といった地域で罪を犯してこちらに送られてくる。施設は古いですし、冬には雪が降りつもって気温がかなり下がるので、高齢の受刑者たちの身心にはかなりこたえるようで、『鳥取刑務所はつらい』という声をよく聞きます。それでも、累犯者は性懲りもなく罪を犯しては何度もこの刑務所にもどってくるのです」

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 刑務所の仕組みを簡単に説明しておこう。裁判で刑が確定し、鳥取刑務所に受刑者が送られてくると、まず「刑執行開始時調査」にかけられ、2週間にわたって犯罪の動機や本人の特性などが細かく調べられる。その後、「処遇審査会」で収監中の指導内容や作業内容(木工、洋裁、炊事など)が決められ、受刑生活がスタートするのだ。

 先述のように刑期は10年未満の者が大半だが、刑期を満了まで務める者と、仮釈放で刑期を少し残して出所できる者とに分かれる。

 仮釈放が出るかどうかは、刑務所内での生活態度が評価の対象となる。刑務所で規則を守って正しい生活をし、再犯の可能性が低いとされた者たちには仮釈放が与えられる。だが、規則を何度も破ったり、出所後の引受人がいなかったり、暴力団に属していたりする人の場合は、満期まで務めなければならない。鳥取刑務所の出所者は、おおよそ半数くらいが仮釈放の対象になっているという。

 梶山氏は話す。

「全国的に、受刑者の数は減ってきています。ピークは2006年でした。鳥取刑務所でも、当時の定員705人に対して760人くらいの受刑者がいて、入りきらないような状況だったんです。それ以降は受刑者の人数が徐々に減っていって、今は380人ほどになった。でも、高齢者の受刑者の割合は、それに反比例するように増えていて、年間の受刑者の1割強が65歳以上になっています」