北海道新幹線の函館駅乗り入れのコスト見積もりに注目が集まっている。函館市の見積もり発表が3月中に行われる予定だが、200億円前後の価格が出てくる可能性も囁かれている。
しかしこの構想を発案した新幹線のスペシャリスト・吉川大三氏は当初、「75億円」という試算を立てていた。吉川氏は大泉潤市長の協力者でもあり、彼が所属する「高速鉄道建設研究会」は今回、あらためてフル規格車両を在来線に乗り入れる場合の詳細な試算と工事、運行計画をまとめ、インフレなどを加味して約115億円という事業費を試算した。総額約120億円という。どんな計算ではじき出したのか。
北海道新幹線の函館駅乗り入れ構想は、北海道新幹線の新函館北斗駅から車両基地へ向かう回送線を利用し、在来線の函館駅まで約17kmにわたって函館線の線路を改良する構想だ。
この構想が実現すると、東京方面からの新幹線列車「はやぶさ」は新函館北斗に到着した後、スイッチバックして函館駅に到着することになる。札幌からも新函館北斗駅で乗り換えることなく函館駅に到着できるようになる。現在、札幌~函館間は特急「北斗」で最短3時間33分、最長3時間59分かかっているが、函館駅乗り入れの試算ダイヤでは、乗り換えなしで1時間11分と大幅短縮になる。
乗り換えを無くすことで短縮される所要時間は10~15分程度と僅かだが、2001年に日本鉄道建設公団(現、鉄道・運輸機構)が発表した「新幹線直通運転化事業調査」では、新幹線と在来線の乗り換えは約30分の心理的負担時間に相当するという。
また、青森~函館間の交流も無視できない要素だ。北海道新幹線開業前は、青森~函館間は在来線特急で乗り換え不要だった。しかし現在は新函館北斗乗り換えが発生しており、交流が落ち着いてしまった感がある。
乗り換えが「ある」と「なし」では「なし」のほうがずっといい。札幌~函館間で高速バスや空路を選んでいた人々も、新幹線の方に魅力を感じる人が増えるはずだ。
調査の報告書が1月に発表されたが…
函館市は大泉市長の意向を受けて北海道新幹線の函館乗り入れについて調査に着手したが、市役所内に鉄道建設の専門家はいないので調査会社に委託することになる。函館市は調査会社を決定するため、2023年7月18日に公募型プロポーザル実施要領を公開した。
応募した企画提案者は「運輸総合研究所・トーニチコンサルタント新幹線等の函館駅乗り入れに関する調査共同企業体」、「中央復建コンサルタンツ株式会社」、「株式会社千代田コンサルタント」の3社だ。審査の結果、8月に「株式会社千代田コンサルタント」に決定した。
「株式会社千代田コンサルタント」が提出した企画提案資料は公開されているので見ることができる。