千代田コンサルタントはこの調査計画書に基づいて、整備費、旅客需要、乗り入れによる効果の検証を実施している。北海道新幹線が函館に乗り入れるための線路や駅をどのように整備するか、整備費はいくらかかり、収支予測がどうなるかを算出するわけだ。
その結果、整備費が函館市及び道、国の支援を得られる範囲に収まり、費用対効果が見込めるとなれば、JR北海道、JR東日本の協力を得て、国へ工事を申請して改良工事の建設着手となる。
そして2024年1月10日、函館市は「新幹線等の函館駅乗り入れに関する調査業務」の中間報告書を発表した。17ページからなる調査計画書の進捗を5ページに整理したものだ。ただし費用、期間、収入など具体的な数字は明示されていなかった。
「私の案とはかなり違うなと」
3月中に発表される函館市の調査結果に先立って、この構想の発案者である吉川氏と「高速鉄道建設研究会」も、独自の調査を実施していた。主宰の吉川氏は日本鉄道建設公団で青函トンネルなど鉄道整備の現場を経験し、鉄道・運輸機構に改組されたのちも各地の都市鉄道や整備新幹線の実現に尽力した人物で「新幹線建設のエキスパート」と言える。その吉川氏は、1月に函館市が発表した報告書に不安を感じたという。
「まず千代田コンサルタントの企画提案資料を見て、私の案とはかなり違うなと。各所に“困難である”とか“困難性が高い”という文言が並んでいるところが気になりました。私は従来の整備新幹線に比べて“簡単にできる”、整備新幹線を新たに作るよりは“コストも安くなる”と考えていたんです」
函館乗り入れ構想は、在来線のレールの外側に新幹線のレールを1本並べて直通させるというアイデアで、この形式は青函トンネルでも実施されている。問題はレールの位置だという。
吉川氏は函館駅に向かって在来線の左側に新幹線のレールを作ることを提案していた。しかし、函館市の報告書では右側になっていたのだ。
「在来線の複線があって、改良する線路は函館に向かって左側、つまり上り線ですね。下り線に在来線があって、こちらと列車が行き来するために分岐器を設置します。このとき、右側増設だとすべての分岐器が三線分岐器という複雑な仕組みになってしまう。右側増設なら三線分岐器は必要最低限です。ただ三線分岐器って、1つあたり5000万円くらいするんですよ」