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 吉川氏の案では、三線軌条区間は新函館北斗駅の在来線合流部から、五稜郭駅手前まで。五稜郭~函館間は在来線(貨物列車含め)の運行本数が少ないため、新幹線と在来線を独立し、単線並列としていた。

吉川氏案は上り線レールの外側(図では札幌に向かい右側と表記)に新幹線用レールを設置する。三線分岐器は青丸の1基のみ(高速鉄道建設研究会資料より)

 三線分岐器は設置費用がかかる上に、保守上も手間が増える。これは人件費や要員確保に関わる重要な要素だ。しかも分岐器は雪に弱く、冬季は可動部品を温めるなどの対策も必要になる。三線分岐器は通常の分岐器より可動部が多いから、保守費用も高くなるため、吉川氏の案では三線分岐器は新幹線が在来線に進入する1個所のみとした。

「プラットホームに近い側に線路を増やすと、新幹線規格の車体がプラットホームに当たってしまうため削ります。そうすると在来線車両が停車した場合は隙間が出来てしまいますが、この間は車両からステップを出せば乗降に支障はありません。山形・秋田新幹線でも車両からステップを出しており、在来線でも実例はあります。たくさんの三線分岐器を作るのと車両の乗降用ステップを比べて、長期的に見てどちらの保守費用が高いのか。将来を考えればプラットホームを削ればいいんです」

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 レールの置き方、三線分岐が変われば、コストは大きく変化する。先を読んだ詳細な検討なしで費用を積み重ねていけば、総工費は青天井でふくらみ200億円を超えてしまうかも知れない。大泉市長の「函館駅乗り入れを実現したい」という希望を叶えるためには、コストも工期も最善を選ぶべきだろう。

吉川氏の試算では総コストは120億円前後

 吉川氏が北海道新幹線の函館乗り入れ構想をはじめて提案した5年前には、工事費は「75億円」と見積もっていた。しかし今回、長年の鉄道技術者仲間からの情報を元に新たにフル規格新幹線のコストを算出すると、初期費用は約115億円。諸費用を加味すると120億円前後になるという。

吉川氏が作成した工事費用見積もり(高速鉄道建設研究会資料より)

「前回の見積もりの時以上に、少しでもコストを縮減するため見直しを行いました。函館~五稜郭間は貨物列車の走行が無いので、単線での運行が可能と思われます。そこで三線軌道とせずに標準軌と狭軌の単線並列としたことが前回と大きく違っています。また、現在五稜郭駅には上屋がありませんが、フル規格の新幹線が停車するということで、前回では考えていなかった上屋を200m新設します。三線分岐器は冬季の保守のことを考え、延長約80mの雪覆いを分岐器箇所に設置することも今回追加しました。このように建設費が上昇しているところもあります」

北海道新幹線が函館駅に乗り入れると「はこだてライナー」はなくなるのか | 文春オンライン