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ステージ上での濃厚キス、尻丸出しのパフォーマンス、エッチな歌詞。すべては“恥ずかしがり屋”の裏返しだった…『プリンス ビューティフル・ストレンジ』

相澤冬樹のドキュメンタリー・シアター

2024/06/06

source : 週刊文春CINEMA オンライン オリジナル

genre : エンタメ, 映画, 音楽

note

「彼が亡くなって3日間泣き明かした。彼の人生の原点に後の彼を形作ったものがある。大スターではない、小さな子どもだった彼のこと。その話を伝えられてありがたい」

©PRINCE TRIBUTE PRODUCTIONS INC.

 地元愛と並んでもう一つ、内気で人が怖かった彼の姿も印象的だ。初期のステージでアンプの方ばかり向いてギターを弾いていた。『パープル・レイン』のプレミア上映中、頭を抱えうずくまっていた。一方で爆発的な才能を輝かせた。

人に愛されても人の愛し方が分からなかった

 人間関係に難があるけど、ある分野で傑出した能力を発揮する。こういう人っているよね。エジソンもアインシュタインもそうだったと言われている。私(相澤)自身、人の気持ちを理解するのがにがてで物事へのこだわりが強いという特徴があり、発達障害と診断されている。

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「頭に浮かんだ音楽を外に吐き出さないと、脳が濁るような強迫観念がある」

 プリンス流“マイルール”への執着っぷりをよく表している言葉だろう。人が好きで触れ合いたいけど、人の気持ちがよくわからない。恥ずかしくてボディガードの陰に隠れてしまう。

©PRINCE TRIBUTE PRODUCTIONS INC.

 それを象徴する証言がある。友人のチャカ・カーン。プリンスの曲をカバーし大ヒットさせたファンクの女王だ。

「みな彼を愛した。でも彼は皆に愛させてくれない。そこが壁だった」

 故郷を愛し、人を愛し愛され、でも人の愛し方がよくわからなかったプリンス。8年前に57歳で急逝したが、「パープル・レイン」と連呼するサビの歌声が耳の奥でこだまする。

「紫の雨を浴びて笑うあなたを見たかった」

 彼の魂は今もどこかにいて、誰かに生きる力を与えているんだろう。

©PRINCE TRIBUTE PRODUCTIONS INC.

『プリンス ビューティフル・ストレンジ』
突然の悲劇から8年、孤高の天才“プリンス”の真実に迫るドキュメンタリー。

STAFF&CAST
監督:ダニエル・ドール/出演:プリンス、チャカ・カーン、チャックD、ビリー・ギボンズ/2021年/カナダ/68分/配給:アルバトロス・フィルム/6月7日公開

ステージ上での濃厚キス、尻丸出しのパフォーマンス、エッチな歌詞。すべては“恥ずかしがり屋”の裏返しだった…『プリンス ビューティフル・ストレンジ』

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