2016年、57歳の若さで急死した天才ミュージシャン、プリンス(本名:プリンス・ロジャーズ・ネルソン)。 80年代、自伝的映画『パープル・レイン』で、一躍世界に名を知らしめたスーパースターはどのようにして誕生したのか? その意外な素顔に迫ったドキュメンタリーをジャーナリスト相澤冬樹がレビュー!

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地元の人は「あんなに謙虚なワルはいない」

 僕は照れくさかった。ステージに立つのが恥ずかしかった。なら立たなきゃいいのにって? でも演奏は生き甲斐なんだ。みんなに聴いてほしい、僕の曲を、音楽を。認めてほしかったんだよ、世界中の人たちに、故郷の人たちに、そして自分自身に。

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©PRINCE TRIBUTE PRODUCTIONS INC.

「プリンス」が恥ずかしがり屋? んなわけないだろ! そういう人は多いだろうね。私もそう。ワルの“殿下”、プリンス。

 デビュー当初からセクシャルなイメージを全面に押し出す。ステージで女性と濃厚にキスしたり、尻丸出しでパフォーマンスしたり、エッチな歌詞を歌ったり。でもあれはぜんぶ恥ずかしがり屋の裏返しなんだ。

 地元の人が証言する。

「内気で観客を見られなかった。あんなに謙虚なワルはいない」

 プリンスといえば映画『プリンス/パープル・レイン』。自伝的映画が世界中で大ヒットし、興行収入、サントラのアルバム、シングルのすべてが全米チャート1位に。映画自体の評価はともかく、アラカン世代でこの曲を聴いたことのない洋楽ファンはいないよね。

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 なのにいきなり「プリンスの死」を宣言し名前をシンボルマークに変えた。読みようがないから仕方なく「かつてプリンスの名で知られたアーティスト」と呼ばれたこともあったっけ。

人種差別に対する暴動で騒然としていた街で生まれ育った

 この映画も『パープル・レイン』にチラッとは触れる。だけどあの映画のようにプリンスの演奏を期待して観ると期待外れに終わるよ。ほとんど曲は流れないんだ。