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実話を元にした感動作だそうだ。私は「感動作」と聞くと、涙腺を固く閉じようとするひねくれ者なので、観始めた当初は、難民キャンプの惨状にショックを受けながらホテルで乾杯したりしているニコラスたちに(別に悪いことじゃないのだけど)、イギリス人ってなんか上から目線だよね、と斜めに見たり、もしニコラスが救おうとする子どもたちが有色人種だったら、彼の計画は英国の人々を動かすことができたのだろうか、なんて疑問が頭に浮かんだりしていた。
が、観るうちに、そうしたひねくれ根性は引っこみ、私の鬼の涙腺もしだいにゆるんでくる。ニコラス老人がカバンを捨てられない理由が明らかになっていくからだ。
物語が1988年と1938年を行き来するうち、老ニコラスが、子どもたちを救ったことを誇るどころか、救えなかった子どもが数多くいたことに苦しんでいることがわかってくる。平気で人を殺せる人間がいる(状況や組織がそうさせるのかもしれないが)一方で、どうして彼のような善人が苦しまなくちゃならないのか、腹が立ってくる。なぜこんなことがいつまでも繰り返されるのか、にも。
八十数年経ったいまも同じような状況が世界にはたくさんある。ウクライナで、ガザ地区で、大きなニュースにならないだけで、他の場所でも。