文春オンライン

大企業の光と影

「いくら眠ろうとしても眠れない」26日間連続勤務で“過労死”寸前…デンソーの課長だった男性が明かす、大企業の管理職の過酷な実態

「いくら眠ろうとしても眠れない」26日間連続勤務で“過労死”寸前…デンソーの課長だった男性が明かす、大企業の管理職の過酷な実態

『会社から逃げる勇気 - デンソーと農園経営から得た教訓 -』より #1

2024/07/02
note

明るい未来が描けない、見通せない生活に絶望する

 課長になって2年はがむしゃらに目の前の仕事を全力で取り組み、職責をまっとうしようと必死だった。その日その日を何とか乗り切ることに精一杯で決して戦略的、計画的に仕事ができたわけではない。従って充実感や達成感などまったくなかったし、プライベートな自分の時間もほとんどなく、未来に希望の光が見えない生活だった。また当時の上司(部長)との折り合いも悪く、パワハラのような扱いを受けることもあった。

 課長になって3年目、多少なりとも精神的にゆとりが生まれるようになった。普通なら喜ばしいことだが、事態はむしろ深刻になった。今まで忙しすぎてゆっくり考える暇がなく気にならなかったことが、気持ちに余裕ができると同時に気にかかるようになり、考え込む日々が続くようになった。いつも頭に浮かんでくるのは、

 自分は会社にとってかけがえのない存在か

 自分の会社生活に未来はあるのか

 自分は一体何のためにこんなに猛烈に働いているのか

 自分はこんなに仕事ばかりするために生まれてきたのか

 すぐに答えのでないような問いが頭の中で堂々めぐりしていた。

ADVERTISEMENT

 そしてもう少し現実的な問題として次のようなことも考え、感じていた。それは、この先出世してもせいぜいもう1ランク上の昇格、昇給するくらい。そこまでは可能でも、現在の自分の序列を考えると、さらに上に登っていける可能性は極めて低い。

 また周りを見回しても「この人のようになりたい」という理想的な上司は皆無だった。この先の会社生活は、まるで真っ暗闇の中を手探りでさ迷い歩いていくような感覚にとらわれた。

写真はイメージです ©アフロ

眠れない日々が続く

 そんな自分の未来のことを考えては不安に押しつぶされそうになることが頻繁に起きるようになった。答えのない問いを悶々と考える日々が続いて、いつの間にか、眠れなくなっていた。正確に言うと寝つきは悪くなかったが、早朝4時くらいにパチッと目が覚めて、もういくら眠ろうとしても眠れない悪い生活習慣が常態化してしまった。

 早朝に目が覚めて布団の中で考えることは、その日にやらなければならない仕事のことはもちろん、人間関係の悩みや、自分のこれからの行く末など暗いことばかり。これが私から活力を確実に奪っていった。眠れないまま6時の起床時間を迎えることになるが、体が重く、出社して自分のデスクに座る頃には、もうくたくただった。これでその日の生産性が上がるわけもなく、暗くどんよりした1日が始まるのだった。

「いくら眠ろうとしても眠れない」26日間連続勤務で“過労死”寸前…デンソーの課長だった男性が明かす、大企業の管理職の過酷な実態

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー

関連記事