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 2021年の東京五輪は入国制限もあり、また基本的に無観客での開催となったことで、幸か不幸か五輪開催に伴う外国人旅行者の動向はわからなかった。しかし、ただでさえ訪問客が多い国で五輪を開催するからといって、五輪に合わせて訪問してみようという人よりも、規制が多いときに行ってかえって不便ならば、別の国に行き先を変えようという人の方が多いかもしれないことは容易に想像がつく。

 実際、パリ五輪直前の7月7日にロイターが配信した記事では、パリ行きの航空券や、パリのホテルの予約が低調だと断定している。

万博の集客効果

 それでは万博はどうか? 万博はそれ自体が「観光資源」と言える。また、開催期間も五輪と比べると格段に長く、大阪・関西万博の場合は、184日間である。

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 1970年に開催された一度目の大阪万博では、当初の入場者数の見込みは3000万人だったが、蓋を開けてみると評判が評判を呼び、なんと見込みの倍以上のおよそ6400万人を記録。筆者自身も小学4年生だったが、親に連れられて学校を休んで日帰りで会場を訪れた。見たこともないような個性あふれるパビリオンの建築群を見るだけでも興奮した。高度成長期の真っただ中、未来を感じさせてくれるイベントを自分の目で見たいという熱狂のようなものがあの時代にはあった。

1970年の大阪万博のシンボルだった太陽の塔

 その後も、1985年に現在の茨城県つくば市で開催された「科学万博」、1990年に大阪・鶴見緑地で開催された「花の万博」、2005年に愛知県の東部丘陵で開催された「愛・地球博」などを見に行ったが、それはイベントそのものへの関心よりも当時の仕事柄見ておくべきだという半分業務の一環の気持ちで訪れたことを覚えている。

 また、海外では、2010年に開催された上海万博を訪れた。このときは、万博オンリーではなく、上海から近い蘇州の世界遺産「蘇州古典園林」の訪問とセットである。入場券は現地へ行く前に日本で買っている。日本円換算でおよそ3400円だった。開場と同時に入場し夜遅くまで会場内を歩き回ったが、今となってはほとんど印象に残っていない。なお、上海万博の入場者数は7308万人で、1970年の大阪万博を大きく上回った。

USJとの戦い?

 こうして振り返ってみると、テーマパークなども少なく、「未来は科学技術などテクノロジーの進歩で明るくなる」と信じることができた時代の万博と、あらゆる情報がパソコンやスマホなどを通じて家に居ながらにして入手でき、VR(バーチャル・リアリティ)やメタバースやプロジェクションマッピングなど、ITの便利さを享受している2020年代の万博では時代がまるで違う。

 私たちにとって、万博というイベントを楽しむ意義はかなり薄れていると考えるのが自然だろう。もし、ほぼ同じ金額を払うとして、大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)と大阪・関西万博のどちらへ行きたいかと問われたら、おそらく万博に手を挙げる人はかなり少ないのではないか。入場日によって価格は変わるが標準的なUSJの入場料は大人1人8600円、万博では当日購入の一日券の標準は大人1人7500円。それほど大差はないからである。