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 筆者は「国」という存在に敵愾心を持っているわけではないし、政治家や官僚に知り合いも一定数いるので、彼らを悪く言うつもりもない。

 ただ、一見民主的に見えて実際にはほとんど政権交代が起こらない政治体制の下、リスクやデメリットを十分検討することなく、あるいは検討したとしてもそれを表に出さず決定していくシステムでは、五輪汚職のようなことが平気で起こりうる。

 2025年の大阪・関西万博がどのように運営され、どれだけ多くの人が足を運び満足感を得られるかはもちろんまだわからない。だが、観光振興や地域の浮揚策としての掛け声や謳い文句については、終了後にきちんと検証してほしいと思う。1970年の大阪万博以降、関西は経済的に地盤沈下が著しいことを私たちは思い起こすべきである。

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 2023年3月に近畿経済産業局が発表した統計によれば、実質域内総生産の全国に占める近畿圏(近畿6府県プラス福井県)の割合は、1970年の万博開催時に20.1%だったのが2021年に15.9%に「順調に」下落しているし、資本金1億円以上の企業の割合に至っては、1970年の22.6%が2021年度には12.7%と半減している。

「万博を開いたから」下落したのではなく、「万博を開いたおかげでこの程度の下落で済んだ」という見方もあるかもしれないが、関西で一瞬盛り上がったあの万博さえ、近畿圏の相対的な地位の低下を止められなかったことは間違いない。今も吹田市の万博記念公園に立つ1970年の大阪万博のシンボル「太陽の塔」を、大阪府などは世界遺産にしたいようだが、そこにどんな意味を込めるのか確認してみたいと思う。

大阪・関西万博は次世代に「レガシー」を残せるか

 余談だが、万国博覧会のために建てられた建物が、今もその都市の主要なランドマークになっている例はいくつもある。パリの景観の重要なアクセントとなっているエッフェル塔は、1889年開催のパリ万博のために建造され、入場アーチの役割を果たした。また、オーストラリアのかつての臨時首都で第2の都市であるメルボルンのランドマーク「王立展示館」は、1880年のメルボルン万博の中心的な展示館として建てられたものである。

メルボルンの王立展示館

 エッフェル塔は、「パリのセーヌ河岸」の一部として、また王立展示館は、周囲の庭園と併せて「王立展示館とカールトン庭園」という名称で、どちらも世界遺産に登録されている。そしてどちらも100年以上を経た今も重要な観光資源となっている。こうした真の意味の「レガシー」を2025年の大阪・関西万博は次世代に残せるのだろうか? そこまで壮大なプランを考えて大阪万博は計画されているのだろうか? その行方を注視したいと思っているし、仕事柄やはり一度は現地で見てみたいとは考えているのだが……。