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中学になると、英語が“テストのある教科”になってしまう

 では、どうすれば語学力=コミュニケーション能力は身につくのだろうか。

「やっぱり僕の中では座学ではなくサッカーとか、なにかきっかけがあった方が話しやすいと思います。今はそのきっかけづくりの場を作りたい。英語が少し楽しくなって、自分で英語の勉強をするように結びつけてくれたら嬉しいなと思いますね。

 幼稚園くらいの年齢の子たちだと、あんまり話すのに拒否反応がないんですよ。コーチの言ったことをそのまま繰り返したり、すぐに順応できる。明らかに抵抗が出てくるのが中学生からですね。中学になると一気に、遊びの英語が“テストのある教科”になってしまう。そこで英語の意味合いがちょっと変わってくるのかなと。だから小学校までに拒否反応をなくしておきたいですね」

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 小さな頃から英語に接することで、活きた言葉を使えるようになる――それはその後の選手としての可能性も大きく広げるものだと森安は語る。

「僕がシドニーにいた時は、元マンチェスター・ユナイテッドのドワイト・ヨークがチームにいたんで、一緒に練習したりもできたんです。昔、テレビで見ていたトップチームのFWの選手が目の前にいるというのは不思議な感覚でした。海外にはそういうチャンスも転がっていて、日本ではプロになれなかった僕でも、そういう機会を得ることができた。

 もちろん一番に目指すのはJリーグで良いと思います。でも、それだけじゃなく少し視野をひろげて海外のリーグを見てみるのも良い経験になると思います」

 

タイやモンゴルリーグに挑戦している若者も

 日本と海外では評価の基準も違う。

 きっと日本を飛び出すことで、劇的な成長を見せる選手も出てくるだろう。

「この前、大学生のサッカーの試合を見てきたんです。上手い子は何人もいたんですけど、彼らがみんなJリーグに入れるわけじゃない。でも、そういうレベルにも海外に行ける子はいると思うんです。日本では評価されないけど、海外に行ったらすごく重宝される選手は絶対にいます。

 僕がJリーグに戻ってきてからは、何人か若い子から相談されることもありました。1人はタイに行ったのかな。その子には『もう考えているより行っちゃった方が良いよ』と伝えました。あとは教えていた大学の研究プロジェクトに来ていた子で、モンゴルのプロリーグに挑戦している子もいる。そういう時に言葉のバリアを取り除けると良いなと思います。

 もちろん不安はあるでしょう。日本語が通じない中でどう生活していくのか。でも、言葉でコミュケーションが取れればサッカー以外にも得るものは大きい。僕は常日頃から『楽しいから行って来いよ』と言っているんですけどね」

 当然、海外ゆえの不便さや、難しいこともあるだろう。だが、海外挑戦にあたって森安がもっとも感じているのは“覚悟”の重要性だ。

「まずは何をやり遂げようとするのか。『言語も学びたいし、サッカーもやりたい』だったらそれはそれでいいと思いますし、『僕はサッカーでやっていきたい。その手段として言語も必要だ』というのならそれでもいい。

 その上で、その選手が日本の外に行くか行かないか。それで彼のサッカー人生は変わってきます。そこで一歩を踏み出す勇気があるかないかだと思いますし、あとは出て行き方を知っているかどうかですよね。その情報の部分がないと、どうしても踏み出せない。だから若い子たちには、そういう情報を発信していきたいとは思っています」

 サッカー日本代表のハリルホジッチ監督は、「コミュニケーションの不足」を理由に電撃解任された。これだけグローバル化した現代スポーツの世界において、“言葉”や“コミュニケーション”の重要性は日に日に増している。日本サッカーが世界で躍進するカギは、技術以外の部分に眠っているのかもしれない。

 

写真提供:森安洋文/Football Heroes