夫のアメリカ転勤に6歳の息子と付いていくつもりだった
――とてもポジティブな捉え方ですね。リーマンショックほどではなくとも、社長業は予想外のトラブルがつきものだと思います。仕事とプライベート……特に家庭との両立は大変だったのではないでしょうか。
諏訪 私が父の会社を継ぐことになる少し前、ちょうど夫のアメリカ転勤が決まって。私は、当時6歳の息子と一緒に夫に付いていくつもりでした。でもその直後に父が急逝して、私が会社を継ぐことになり、生活はガラッと変わりました。夫が渡米して頼れる身内が身近にいなかったため、子育てに関しては近所のママ友たちが助けてくれて……。本当にありがたかったですね。
――当時の諏訪さんの決断に対して、パートナーや息子さんはどのような反応を見せたか教えてください。
諏訪 夫は最初は戸惑っていましたが、「貴子が決めたことなら」と応援してくれました。夫の渡米後は、私と息子二人の生活が始まりましたが、とにかく息子が私を支えてくれて、すごく頼もしかったですね。
「お母さんはかっこいいよ」と言ってくれた息子の支え
――息子さんは、どのように諏訪さんを支えてくれたのでしょうか。
諏訪 例えば、夫が渡米して初めて迎えたクリスマスの日、仕事を休んで息子と一緒にアメリカに行ったんですよ。日本から夫がいるところまでの移動は約1日かかるのに、6歳の息子は泣き言ひとつ言わなかった。それどころか「ママ疲れたでしょ」と言って、私の荷物まで運んでくれようとしたんです。
また、当時は結婚したら専業主婦になるのが一般的だったため、私が働くことに対して、私の母が否定的で。「母親なのに朝から晩まで働くなんて、子どもがかわいそう」とよく言われました。でも、その度に息子が「僕は寂しいと思ったことないよ」「お母さんはかっこいいよ」と母に言い返してくれて、すごく嬉しかった。息子が成長するにつれて母の考えも変わってきたようで、その後は良い関係を築くことができました。
後から聞いた話なのですが、夫が渡米するとき、息子と「これからは、お前がお母さんを守るんだぞ」と約束したらしくて。「いや、家族を守るのはあなたの役目でしょ」と思いましたが(笑)。夫との約束があったから息子は私を支え続けてくれたんだな、と納得しました。そんな息子も、いまでは27歳です。