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20歳で夢を叶えた人気作家が、後輩の女子高生たちに伝えたこと

阿部智里、母校に帰る──「夢を仕事にするということ」

「これが現実か」って思いました。いろいろな巡り合わせがあって、「作家になる」という夢が叶ったというところまでは、自分でもシンデレラストーリーだったと思うんですが、その後に私を待っていたのは、悲しい現実でした。

酷評されたデビュー作

 しかも、当時、私の作品は酷評されました。「こんなの売れるわけがない」とも言われました。とある業界の人には、「なんで阿部に賞をやってしまったのか。若くて話題性があるということのほかに受賞理由がない」と言われてしまいました。さらに、「これは新人賞を目指す全ての人にとって最悪の見本だ」とまで言われました。悲しいですね。自分が人生をかけて書いたものをそこまで酷評されるのは。

 でも、そう言われた時に、ショックではありましたけれども、そういう風に言われて当然だろうと思う自分もいたのです。だって仕方ないです、自分の実力がないのだから。

 そして、私はその後自分がどうすればいいかもわかっていました。ちゃんと売れるもの、評価されるものを書く。もうあとは書くだけしかやることがありません。そして、私は書いて、書いて、書き続けました。

みなさんに伝えたいことがあります

 現在、それから6年が経ち、ほぼ生き残りがいないと言われるラインを突破し、なんとか私は今、ここに立っています。そこで私がみなさんに言いたいことがあります。

「夢を仕事にする」というのはどういうことでしょうか? 私の夢見ていた「伊佐坂ライフ」の現実は、思っていたのとはだいぶ違うこともたくさんありました。辛いことも、叩かれてへこんだこともあります。でも、それ以上に自分のやりたいこと、夢だったことを仕事にできるというのは、本当に楽しい事です。幸せなことです。

©文藝春秋

 私は編集さんたちにも家族にも恵まれて、運が良かったから、早い段階でデビューすることが出来ました。でも、運だけではここまで来られなかったと思います。結局のところ、夢は願い続ければ叶うということでもなく、夢を叶えるために行動した人間が、夢を叶えるんだろうと、私は思っています。

 きっと、ここにいるみなさんにもやりたいことがいろいろあって、それはもしかしたら困難な道かもしれなくて、自分の夢を人に明かしたときに、「いやそれは大変だよ」「現実はそんなに簡単にはいかないんだよ」って言う人は、たぶん周りにいっぱいいると思うんです。

夢を仕事にすることは本当に楽しい。辛いことさえ、楽しい

 もし、そうみなさんに言う人がいるのならば、私はみなさんに伝えたい。夢を叶えて自分の仕事にするということは、本当に楽しいことです。辛いことさえ楽しくなります。

 もちろん仕事をするということは、実務的なことも絡んできますし、責任も伴いますし、大変なこと、叩かれること、うまくいかないことがいっぱいあります。でも、そんな苦しさですら楽しくなるということが現実に存在するんだということを、今日はみなさんにお話ししたくてここにきました。それが今日、私がみなさんに伝えたかったことです。

講演後、阿部さんが頼まれて書いた色紙 ©文藝春秋

 では、質問があったら、遠慮せずに、「収入はいくらですか?」でもいいので、何でも聞いてください(笑)。

弥栄の烏 八咫烏シリーズ6

阿部 智里(著)

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2017年7月28日 発売

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