そもそも、ここまでの文章で「親としては」という言葉を意図的に使ったが、親から見て嫌なことは子供にとっては喜べるものだといえる。

 お金を乞うエクスペリエンスも、親にロバックスを買ってもらえない子供としては一筋の希望だろう。人気ゲームをパクったエクスペリエンスも、子供が無料でそれを体験する機会になりうる。

著作権侵害、詐欺、アカウントハック、いじめ、なりすまし…

『Roblox』は「子供が自分の好きなキャラクターを集めて描いた自由帳」のような代物といえる。幼い子供は何かを真似しながら学ぶため、自由帳には当然ながら見知ったキャラクターたちが集まるし、イマジネーションされたものも既知のものになりやすい。そして、『Roblox』を通じてそれがインターネット上に出てしまうだけともいえよう。

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 あるパパ友達は『Roblox』を「ビックリマンチョコの偽物」とたとえていた。

セガの「ソニック」も『Roblox』では大人気。オフィシャルゲーム『ソニックスピードシミュレーター』は10億回以上も訪問されている。画像は『Roblox』よりキャプチャー

 ビックリマンチョコは1980年代に流行したシールつきのチョコレート菓子。あまりの人気ぶりにお菓子を捨ててシールを集める子供が出たほか、コピー品や偽物もたくさん出回ったようだ。

 この偽物は大人からすれば好ましくないものだし、ビックリマンチョコを販売しているロッテからすれば最悪の代物だろう。ただ偽物だったとしても、子供たちがそれを通じて得たコミュニケーションや楽しさは本物なのである。

 むしろ、常識から外れられない公式のものよりも、ぶっ飛んだ偽物のほうがおもしろいと解釈される可能性すらある。そう考えると、『Roblox』が支持されるのもわかるような気がするのだ。

 そもそも、『Roblox』における問題はインターネットの縮図なのではないか。この世界には著作権侵害、詐欺、アカウントハック、いじめ、なりすましなどたくさんの問題があるものの、それはよくよく考えればインターネットにもあふれすぎているものだ。

 SNSを覗けば売春や闇バイトへの誘いがあり、ふつうにインターネットを見ているだけでも詐欺広告が出ることすらある。誰かと誰かのトラブルなんてもう聞き飽きてどうでもいい。『Roblox』は「子供が多いメタバースなのに治安が悪い」と認識しそうになるが、そもそもインターネット自体に問題が山積しているのである。

 ただ、それはそれとして、『Roblox』が親にとって厄介な代物に見えるのは間違いない。たとえ地獄だとしても、子供に付き合ってうまくそれを使えるよう教えてあげなければならないのだ。