――年をとると体型も変化しますが、安彦さんには「崩れた体を相手に見せたくない」など、加齢によるセックスへの抵抗感はありますか?
安彦 10代の頃に比べれば、55歳の今の体はやっぱり全然違いますね。でももう「ご新規の男性としたい」という気持ちはないので、見られるのは夫からなんですよ。
で、夫を見るともちろん「お腹が出てきたな、老いたな」とか思いますけど、それは自分も同じなので、お互い様という気持ちになりますね。だから、容姿は明らかに変わってますけど、それは否定するものじゃなく、いたわり合うような気持ちです。
――安彦さんは55歳で、旦那さんは49歳。老いを徐々に受け入れている?
安彦 はい。長年一緒にいて、一番リラックスできる関係なので、顔を見合わせて「お互い、老けたよね」とか言っちゃいますし。
――「相手に若々しくいてほしい」という気持ちはありますか。
安彦 それはないですね。一緒に暮らす子ども3人はみんな10代なので、若さがあふれてるんですよ。娘のお尻とかを見るとプリプリで、「うわー、内臓がものすごく新鮮そう!」とか思ったり(笑)。
でも、私自身はもう、若い子と同じ土俵に立つ気は全然ないです。50代が10代、20代の子と若さで勝負するのは、みっともないじゃないですか。そもそも勝てるわけがないし。30代の頃はまだ、心のどこかに若くありたい気持ちがありましたけど、40を過ぎてからは全然違うなと思うようになりました。
「さすがに80代では難しいだろうなとも思いますよ」
――最近は「人生100年時代」といったりしますが、何歳頃までセックスをしたいと思いますか。
安彦 そうですね。する機会があれば、今後もぜひ。ただ、私の父が今80代で、それを見てるとさすがに80代では難しいだろうなとも思いますよ。だから、何歳までというより「もうしないでいいや」と思ったらそのときなのかな、と。
20代の頃は、自分の性欲が減るなんて想像できなかったですけど、「今までに楽しいセックスはいっぱいしたから、別にもういいか」という気持ちもあります。
――特に心残りはない?
安彦 はい。「もっとしておけばよかった!」みたいな気持ちはないですね。それで、というのも変ですけど、閉経から5年経ってやっと更年期を抜けた感じがしたので、去年の秋に一人旅で富士の樹海に行ったんですよ。
――更年期が終了して樹海へ。なぜですか?
安彦 私は怖い話とかホラーが大好きで、富士の樹海は自殺の名所だから、ずっと気になってたんです。
怖い話には「死」がつきものじゃないですか。逆にセックスは「生」の象徴だと思うんですけど、私の中では「生きてる」と「死んでる」は両極端のようで、実は背中合わせじゃないかなと思うんですよね。だから、更年期あけの“再生記念”として樹海に行きたくなったのかなと。
――生≒性と死がくっついているんですね。
安彦 夜に怪談を聞いて寝れなくなったら、とにかくエロいことを考えるといいっていうじゃないですか。だからやっぱり、2つで1つなんだと思います。

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