男性作家からの“衝撃的なアドバイス”
「本当は人並みにずるいくせに、『私は虫も殺しません』って顔はしないほうがいいぞ。人によっては見抜くし、鼻につくから」
――主人公の葉も、“いい子”の仮面をかぶっていることを同居人の那津から指摘されていました。
大木 芸能界の大物の方には「アンドロイド」と言われましたが、私としては、「仮面」という言葉がしっくりくるワードで。“いい顔”することに慣れすぎてしまって、外に出る時には“それ”をスチャッと装着して出掛けるのが当たり前になっていました。
そうすると何が起こるかというと、本来の自分とはかけ離れた、偽りの“いい子”を好いてくれる人が来るので、波長の合わない人を引き寄せてしまうんですよね。当時はこの悪循環を繰り返していました。
――小説家となった今、状況に変化は?
大木 作家になって自分がやりたかった職業で生活費を稼げるようになり、これで男性におもねることなく発信できる! と思ったら、ある時、先輩作家の男性と食事をしていたら、「男として文芸の世界を見てきたから言うけど、この世界で女が生きていくのは難しい。だからお前は金持ちとでも結婚して面倒を見てもらったほうがいい。トロフィーワイフとしての生活も悪くないぞ。勿論、それに見合う努力が必要だけどな!」と突然言われて……お前もか! ここにもいたぞ! となりました(笑)。
ただその一方で、男性側の生きづらさについて考えさせられることもありまして。
――「男性の生きづらさ」とは?
大木 知り合いの男性がいつ会っても忙しそうなので聞いてみたら、「でも、これが仕事だから。65歳まで働き続けなきゃ」と話していて。傍から見ても到底、65まで続けられるわけがないほど仕事で忙殺されているんですけど、彼は「男だから当然」という認識なんですよね。
「男が稼ぐのは当たり前」といった“男らしさ”の呪縛から解放されない限り、女性の苦しみも続くのだろうと思うと、今は男性学も勉強しないといけない、と思っています。