1980年代ハリウッドの特殊造形師と現代ロンドンのCGクリエイター。映画の特殊効果に魅せられた二人の女性を通して創作者の情熱と苦悩をリアルかつ力強く描いた、深緑野分さんによる直木賞候補作『スタッフロール』。

 その文庫化を記念した深緑さんによる白組インタビュー企画、今度はエフェクトアーティスト / コンポジターの野島達司さんにお話を伺いました。『ゴジラ-1.0』での海のCG表現が世界的に評価された弱冠26歳のクリエイターは、いかにその才能を育み、何を見据えているのか。必読のインタビューを前後編でお送りします。(前編はこちら

野島達司さん(左)と深緑野分さん

1年で大学を休学

深緑:野島さんにとって白組が最初の会社ですか?

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野島:正社員は初めてですね。アルバイトは高校のときに別の会社でもありましたけど。

深緑:他社でスタッフをした経験からSNSで声をかけられて白組に遊びに来て、そのままアルバイトとして参加したという経緯でしたよね。

野島:そうです。白組のバイトが始まったのは大学1年生の終わりの春休みで、自分としては次の4月には大学をやめるつもりでいたんですけど、「いや、さすがにもうちょっと考えろ」と周囲からも言われて、いったん休学することにしました。でも白組のほうが面白かったので大学に戻る気はなかったですね。自分で言うのもあれですけど、大学ではあまり学ぶことねえなって思っちゃいました。

深緑:白組では最初から仕事を任せられていたんですか?

野島:そうですね。最初の『コード・ブルー』ではさすがに手取り足取りでしたけど、次のCMの仕事からは超絶大変で血みどろになりながらバリバリやっていました。

深緑:そこで「仕事としてやれる」という自信がついたんですか?

野島:目の前に来たものをただ全力でやっていたみたいな感じで、あまり未来は想像してなかったですね。