ストライキが犯罪なんて戦前に逆戻り?
一連の関生事件で無実を訴えた組合員31人のうち、無罪が確定したのは10人に上る。異常ともいえる無罪率の高さは、捜査が“無理筋”だったことを窺わせる。だが個々の組合員には計り知れない打撃を与えた。取り調べで保釈と引き換えに労組をやめるよう迫られることも多く、関生の組合員は10分の1に激減した。セクハラを解決してもらった縁で関生に入ったという女性組合員の話は、胸に迫るものがある。
「みんなが(釈放されて)出てくるまでは踏ん張ろうと言ってたんですけど、誰も聞いてくれなかったし。みんな自分のことしか考えてへんし、連帯(=関生)と一緒に沈みたくないって言われたこともあって、辛かったなあ」
大阪で取材していると、関生への共感の広がりも感じる。例えば大阪・豊中市の木村真市議は森友事件の追及で知られるが、関生への捜査についても早くから不当だと訴えていた。京都地裁で今年2月に言い渡された無罪判決の意義はとりわけ大きいという。
「関生の行動が労組の正当な活動として判決で認められました。それを刑事事件にした方が異常じゃないですか。ストライキが犯罪なんて、戦前に逆戻りしたみたいです」(木村市議)
働く者の自由と権利が奪われないために
この作品は、大阪の毎日放送(MBS)のドキュメンタリー番組を大幅に再編集して映画に仕上げたものだ。監督の伊佐治整ディレクターは、関生事件を「扱いが難しい割に関心が低いネタ」として多くのマスコミが敬遠してきたことへの自戒を込めたという。
「裁判を傍聴していると、組合を“削る”という言葉が検察から出てくるし、労働法をよく知らない裁判官もいることがわかります。関生は“反社”扱いされましたけど、実は労組としてやるべきことをやっただけではないでしょうか? 労組が犯罪集団とされる危うさをもっと報じるべきだと考えました」(伊佐治監督)
ナレーションはMBSの有名アナウンサー西靖さん。ラストコメントが光る。
「目をそらしてはならない。働く者の自由と権利がこの手から奪われないために」
『労組と弾圧』
ディレクター:伊佐治整/制作:MBS毎日放送/2025年/日本/75分/TBSドキュメンタリー映画祭2025で上映
