中学での挫折

 迅斗さんは見事中学受験に合格。関西で5本の指に入る中高一貫の進学校に通い始めた。

 迅斗さんが小学校の後半から四国で暮らしていた一家だったが、迅斗さんが中学生になるタイミングで、関西に住む母方の祖父母宅の近くに分譲マンションを購入。両親と妹と迅斗さんの4人で移り住んだ。

 同じタイミングで母親は、住宅ローンの返済や迅斗さんの学費に充てるため、スーパーマーケットでパートを始める。

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 もともと出張や転勤の多い会社に勤めていた父親は、単身赴任になってしまった。

「これが僕の挫折の始まりでした。進学校ですから、当然、周りは勉強ができる人だらけ。僕は中学受験で燃え尽きてしまい、全く勉強しなくなったため、小学校の頃とは打って変わって下から数えたほうが早いような成績に落ちました。その上、運動神経はからっきしです。結果、僕は“勉強も運動もできない子ども”になり、自分自身の不甲斐なさに何度も絶望しました」

 挫折の始まりは、母親も同じだった。せっかく購入したマンションの隣人が、「朝4時から掃除機をかける」「時々ベランダから大声で叫ぶ」「引っ越してきたばかりの迅斗さん一家の悪口を言いふらす」などの迷惑行為を繰り返し始めたのだ。

※画像はイメージ ©AFLO

「悩んでいた母に僕は、『警察へ相談しよう』と言いましたが、『逆恨みが怖い』というのでしませんでした。当時、父は単身赴任で不在にしており、男手は中学生の自分しかいなかったためです」

 不運は続いた。

 母親のパート先の人間関係が悪く、思うように休みが取れないため、母親はよく迅斗さんに愚痴をこぼすようになる。

 迅斗さんが「なら辞めれば?」と言うと、

「あんたの学費や家のローンがあるから辞めれるわけないでしょ!」

 とキレられた。