「もう逃げるとこないやろ」2015年に居酒屋「グランマ号」を開店
「かつての横領犯に渡すのはダメですよ」と冗談めかして言うと、仲間からこう返された。
「もう逃げるとこないやろ」
15年に居酒屋「グランマ号」を開店した。
たばこで停学処分中だった高校2年のとき、ゲバラの伝記を読んで生き様にひかれ、やり直そうという気になった。そのときを思い出し、あこがれの人物を乗せたボロ船の名を店名にし、「新たな人生への出発」という思いを込めた。
店は釜ケ崎に関わる人びとの憩いの場としてにぎわっている。ここではずっと「新井」で暮らしてきたので、実名を知らない客のほうが多い。
店はかつて賭場があったとされる場所。開店当初は常連客らしき男性から「券は買えるのか?」と声をかけられた。奥の倉庫には頑丈な鍵が付いた扉やのぞき窓があり、警察が踏み込んだときに時間稼ぎができるような造りになっている。
「物珍しさやこわいもの見たさでカマをのぞきに来る人がいる。カマに住む人間でも、ときに弱い人がさらに弱い人を非難する。そんな内外の差別はあるけど、それも包容できるまち」。釜ケ崎に漂着し、居続ける理由をこう話す。
「僕が持っている服は3着の作業着だけやけど、それで十分にやっていける楽さがある。一生このまちがいいなって最近、思うんです」

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