「お客さんに処女を捧げることになる」という危機感

――一連の投稿の中には、《旦那さん制度、まだあります。花街の中の人公認になるので花街結婚という方が早い。私は5000万円で処女を売られそうになった》というものもありました。これはどういう状況だったのですか?

桐貴 花街には、古くから客が舞妓や芸妓のパトロンとなる「旦那さん制度」が存在し、旦那さんとなった男性と舞妓は花街では夫婦として扱われます。私には3人の旦那さん候補がいて、置屋(舞妓の所属先)は3000万~5000万円という金額を提示していたと聞いています。

 表向きは体の関係はないとされていますが、旦那さん候補のうちの一人からは、「僕は処女じゃないとダメなんだ。君は処女だよね」としつこく尋ねられました。このままではいつかお客さんに処女を捧げることになるという危機感から、一刻も早く舞妓を辞めなくてはと思うようになりました。

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――そして16年の7月に退職。6年越しに告発しようと思ったきっかけはなんだったのでしょう。

桐貴 舞妓を辞めた直後は、告発なんて考えもしませんでした。置屋のお母さんや先輩から言われた、「いつか私たちの言葉が届きますように」という言葉が頭にこびりついて、「自分が悪いんだ」と思い込んでいたので……。けれども結婚して第一子を出産し、自分の人生を見つめ直したときに、自分の感情にもっと正直でいたいと思うようになったんです。あの時、私がおかしいと感じたことを、世に問うべきじゃないかと。その気持ちが高まって、気づけば後のことは何も考えず、投稿していました。

――花街は限られた人のみが遊ぶことのできる閉鎖的な場所。初めて明かされる実態に驚きの声が上がる一方で、桐貴さんの投稿を「全部ウソ」などと否定する声も多くありました。

舞妓時代の桐貴さん。当時16歳だった(桐貴さんのXより)

桐貴 私のことを観光客が舞妓の衣装を着ただけの「変身舞妓」と言う人もいましたね。そうした発言をする人の中には、私が相談をした時に「わかるよ。大変だよね」と親身になってくれた花街関係者の方もいて、裏切られた気持ちにもなりました。一方で、XやインスタのDMには元舞妓さん、現役の芸妓さん、花街関係者などから、「私もこんな体験をした」という共感の声がたくさん寄せられました。そこで分かったのは、私の告発のさらにさらに上をいく、もっとひどいことが行われていたということでした。

――どんなことが行われていたのでしょう。