岸田派の事情と権力闘争のおぞましさ
こんな見立てもあった。あの谷垣禎一氏の近況を伝える記事。
《「首相と谷垣氏は政治理念や路線が違う。ハト派の岸田政調会長が出馬すれば、岸田氏を支持するのでは」(ベテラン)と見る向きもある。》(「谷垣氏復帰 高まる期待」読売新聞 7月6日)
総裁選は、岸田氏が憲法を軸に論戦を仕掛ければ活性化する可能性もあった。しかし岸田派には先述したように「焦って安倍さんを怒らせたら大変だ」という声があった。
すると安倍首相はそんな岸田派の事情を見透かしたように、
「自民総裁選『改憲争点』」(毎日新聞 7月21日)
と宣言。
以前、首相周辺は出馬表明の時期についてこんな発言をしていた。
「焦って表明する必要はない。遅くすればするほど他候補の動きを封じ込めることが出来る」(側近議員)(読売新聞 7月14日)
読売は「豪雨被害への対応を優先。出馬表明を遅らせ、他候補の動きを封じる狙いも」と解説していた。
これも総裁選の駆け引きであり権力闘争のおぞましさなのだろうけど、「改憲」を争点にあげつつ、出馬表明を遅らせて論戦ができない状況を仕向けているのはなんとも味気ない。
岸田氏、この流れを見てもまだ将来の禅譲を期待してるの?
「岸田さんはどうするの」「どうしましょうか」
そう思いながら注視していたが、不出馬という報。
各紙には「内幕」が出てきた。生々しい記事をあげておこう。
6月18日夜におこなわれた赤坂の日本料理店での安倍・岸田二人の様子を書いたのは読売(7月26日)。
《安倍はいらだちを抑えつつ、事実上の最後通告を突きつけた。
「(総裁選に)出たら、処遇はできないよ。私を応援してくれる他の派閥に示しがつかない」
岸田は何も答えず、日本酒を口に運んだ。誘ったのは安倍の方だった。》
《 「ポスト安倍」を狙う岸田が総裁選に出馬するのかどうか。これまで遠回しに腹を探ってきた安倍だったが、この日は単刀直入に切り出した。「岸田さんはどうするの?」。岸田は「どうしましょうか」といつものように煮え切らず、安倍支持を明言しなかった。》
存在すら否定されている……!?
その2日後の夜、安倍首相は銀座のステーキ店で麻生太郎副総理兼財務相、二階俊博幹事長らと会食。
《麻生が過去の総裁選を引き合いに、「負ける候補の推薦人は冷遇されるんだ」と言い放つと、場は大いに盛り上がった。》
やはり、あの「冷遇」発言は岸田に向けてのものだった。
岸田氏は24日の不出馬表明の記者会見で、
「昨日(23日)直接会って、(首相)と話をした」と説明した。
しかし……。
菅官房長官は25日の記者会見で、
「(首相は)会ったことはないということだった」と否定した(朝日新聞 7月26日)
不出馬となれば、もう存在すら否定されている……!?
もう一度言うが、岸田氏はこの扱いでもまだ将来の禅譲を期待してるのだろうか?
家康ならそんな甘いことは考えないだろう。