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「あ、私はバレエの人じゃないな」って

――4年間の留学でバレエダンサーへの道は開けたんですか?

石橋 実は留学中に何度も「あ、私はバレエの人じゃないな」って思う瞬間があったんです。特にボストンの学校では、バレエをするために生まれてきたようなスタイルのいい子が多くて。でも、私の中であきらめがつかないところもあって、続けていたんです。そんな時に、カルガリーで出会ったのがコンテンポラリーダンス。

 

――舞踏の中でも現代芸術の領域にあるパフォーマンスですよね。

石橋 そうですね。バレエは形ありきで、その中での美しさを追求する表現だと思うんですが、コンテンポラリーダンスは振付家によって表現方法が全然違うし、即興も入ってくる。自分がどう表現したいかがとても大事にされているアートだと思っています。その理屈や言葉にできない面白さに惹かれて、こっちの道があるかなって勉強し始めたのがカナダ時代です。

――ちなみに好きなダンスカンパニーはありますか?

石橋 いっぱいありますけど、振付家で言うとドイツのピナ・バウシュ。それから、オハッド・ナハリンというイスラエルの振付家が大好きです。何をしているのかよくわからないダンスだなあって見ていると、そのうち涙が出てくる。そんな舞台を作る人なんです。

 

この人は、どんな姿勢で、どこに重心を置いて動いているんだろう

――身振りだけで涙を誘うって、表現としてはすごいものを感じますね。

石橋 ほんとにすごいんです。ナハリンの振り付けから見えてくる「個の強さ」に感動するのかな。1度イスラエルに行ったことがあるんですけど、男女問わず兵役がある国で、若くてきれいな女性さえもが軍服を着て訓練している。明日死ぬかもしれない、明日爆撃されるかもしれない、そんな緊迫した状況が常にある国なんですよね。だからこそ、ダンサーひとりひとりが今、ここで踊っているという集中力がすごくて。その気迫と振り付けが見せる「強さ」に心が動くというか。うまく言葉にできないんですけど……。

 

――石橋さんにとってバレエやダンスを学んだ経験は、現在の演技にどう繋がっていると思いますか?

石橋 特別に意識してはいないんですけど、誰かを演じるときに、この人はどんな姿勢をして、どんな動きをするのかなって想像するのが好きです。どうやって歩くのかな、どうやって座るのかな、立っているときはどこに重心を置く人なのかなとか。この人は悲しいから……って感情のほうから演技を組み立てると、なんか頭でっかちになっちゃって自分には向いていないんです。それよりも、まず形や動きから、身体からその人に入っていく方が、私は演技しやすいですね。

――もちろん、より子さんを演じるときも。

石橋 はい、もちろん。その方がグッとその人の人生の内側に入れるような気がしていて。だからこそ、今でも思うんですよね、「より子さん、今、どうしてるかな」って(笑)。

#2へ続く)

 

写真=榎本麻美/文藝春秋 
ヘアメイク=村上綾

いしばし・しずか/1994年、東京生まれ。バレエ・ダンス留学から帰国後、ダンサーとして活動、2016年にNODA・MAP『逆鱗』に出演。2017年には『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』に出演、数々の新人女優賞を受賞。主な出演映画作品に『PARKS パークス』『きみの鳥はうたえる』、テレビドラマ作品に『半分、青い。』『You May Dream』など。

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