安達裕哉 独り仕事もカレンダーに記入

安達 裕哉 ティネクト代表取締役
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 ピーター・ドラッカーが指摘したように、成果をあげるためには、「まとまった時間」が必要となる。ドラッカーは具体的に、次のように述べている。「報告書の一次原稿の作成に6時間から8時間を要するとする。しかし1日に2回、15分ずつを3週間充てても無駄である。得られるものはいたずら書きにすぎない。ドアにカギをかけ、電話線を抜き、まとめて5、6時間取り組んで初めて下書きの手前のもの、つまりゼロ号案が得られる」(『ドラッガー名著集1 経営者の条件』)。

 文芸の分野では、それは当然のこととされる。川端康成、三島由紀夫、池波正太郎などの文豪たちは一様にホテルに缶詰めになって執筆した。村上春樹も「書き下ろしの長編小説を書くには、1年以上(中略)書斎にこもり、机に向かって1人でこつこつと原稿を書き続けることになります。朝早く起きて、毎日5時間から6時間、意識を集中して執筆します」と『職業としての小説家』で記述している。

 一方で、オフィスワークにも同じことが言える。コンサルティング会社時代の私の上司は、渾身のセミナーテキストを作る時には、自席ではなく、部屋の片隅の丸いテーブル、目立たぬ場所でポツンと1人、赤ペンを握っていた記憶がある。それは誰にも邪魔ができない時間であった。

安達裕哉氏(本人提供)

「人間の脳はマルチタスクに向いていない」とする、脳科学の知見があるそうだ。実際、高度な知的活動、つまり学問や芸術、プロスポーツ、多くの創作活動、コーディング、そして余暇や趣味に至るまで、成果をあげようとすれば、上記のような「まとまった時間の確保」が必須だと、多くの専門家が述べている。

 ではまとまった時間を確保するにはどうすればいいのか。それが本稿の主題の「つながらない時間を作ること」だ。

 しかし、実践は言うほど簡単ではない。その人が優秀であればあるほど、様々な人が常に割込みをかけてくる。会議、メール、電話……放っておけば、たちまち「まとまった時間」は虫食いだらけとなる。彼らは強い意志を持って、部屋にこもり、連絡を絶ち、「つながらない」を実践して「邪魔されない、まとまった時間」を確保するのだ。

「生み出す」ための悪あがき

 ただ、これとは真逆の意見もある。ビジネスパーソンの中には「つながらない、なんてとんでもない。即レスが重要だ」と主張する人も少なくない。常に回線を開けておき、部下や顧客、知人がつながりたい時に、つながれるようにしておくことが重要だという主張だ。

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source : 文藝春秋 2025年7月号

genre : ライフ 企業 働き方 テクノロジー ライフスタイル