画風も生き方も異なる天才画家はなぜ競演したのか?
山下 思い返せば、僕が初めて辻先生にお会いしたのは、20歳のとき。先生は46歳でした。それから47年が経って、先生とこうして伊藤若冲と円山応挙の「合作」をめぐって対談できるのは嬉しい限りです。
昨年、伊藤若冲の「竹鶏図屏風」と円山応挙の「梅鯉図屏風」が新たに発見されました。その作品を私が監修した「日本美術の鉱脈展」(大阪中之島美術館にて、6月21日から8月31日まで)で初公開します。若冲を長年研究されてきた辻先生にささやかな恩返しができたのではないかと思っています。


辻 江戸時代の日本美術の両横綱が競演している絵が出て来たことは奇跡ですよ。しかも、保存状態が良好なのが素晴らしい。金箔もよいものを使ってますよ。
山下 向かって右の応挙の「梅鯉図屏風」と左の若冲の「竹鶏図屏風」は描かれている屏風のサイズが一緒です。しかも地に貼られている金箔は、質も一枚のサイズも貼り方もまったく同じ。かなり裕福な発注者が最高の金屏風を二枚仕立てて、若冲と応挙に渡し、一作ずつ描いてもらったと考えられます。制作年も落款から若冲の作品は1790(寛政2)年以前、応挙の作品は1787(天明7)年とほぼ同時期ですから、2人の「合作」「競作」と言って間違いありません。
辻 私もそう思います。現在は個人蔵とのことですが、どこかの美術館か博物館に収められれば、たちまち重要文化財に指定されるでしょうね。
山下 発注者はおそらく若冲に「鶏」、応挙に「鯉」と2人がもっとも得意とする画題を指定して墨一色で描いてください、とお願いしたんだと思います。
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