スズキ会長の功罪、伊藤忠社長の過去、大手通信キャリア3社の苦しみ、HIS攻勢の陰で……

丸の内コンフィデンシャル

ビジネス 企業

★鈴木修の功罪

 スズキ(鈴木俊宏社長)が出荷前の完成車の検査で不正をしていた問題で、4月19日、国交省は本社への立ち入り検査を行った。

 同社の検査不正を巡っては昨年8月、出荷前の自動車の排ガスや燃費性能を検査する工程で不正が見つかっていた。同じく検査不正を行っていた日産自動車(西川廣人社長兼CEO)やSUBARU(中村知美社長)と比べて悪質なのは、国交省の調べに対して「無資格検査はなかった」と説明していたからだ。また国内3工場で無資格検査を隠蔽、不正の証拠となる資料を破棄していた。

 1回の届出台数としては過去最高の約202万台のリコールに追い込まれ、関連費用として2019年3月期連結決算に約800億円の特別損失も計上。長島・大野・常松法律事務所の調査報告書は「スズキの完成検査業務の重要性に対する自覚の乏しさが主要な要因」と断じている。スズキイズムと呼ばれる効率主義が、法令順守や品質管理を軽視する風土に繋がっていた。

 鈴木社長は記者会見で「スズキイズムの誤った理解があった」と釈明。「役員報酬の減額を検討する」と語ったが、経営責任については言及していない。父の鈴木修会長に至っては、会見に出席せず、「当社が急成長したため、人材の教育・育成が追いつかなかったことを反省している」とコメントを発表しただけだった。

 89歳の鈴木会長が、現在のスズキを築き上げたのは間違いない。だが一方で同社がガバナンスとコンプライアンスの両面で深刻な問題を抱えているのは、40年以上にわたってトップに君臨し続け、スズキイズムを浸透させた鈴木会長に起因しているのは明らかである。「自らの分も含めた役員報酬額や役員人事を、鉛筆を舐めながら決めている」(元役員)と言われるほどのワンマン体制の是正が、いま求められている。

★伊藤忠社長の過去

 伊藤忠商事(岡藤正広会長兼CEO)が33%もの株を持つ航空機内装品大手のジャムコ(大喜多治年社長)と、同社の生産子会社である宮崎ジャムコ(神山行雄社長)などで、4600件あまりの検査不正が発覚した。

 不正は2種類ある。宮崎ジャムコでは、有資格者が作業をする検査工程で、無資格の検査実習生が有資格者の検査印を借用して検査をしていた。日産自動車などで明るみになった検査不正と同じ構図だ。もう1つはジャムコの立川工場で発生した。委託先に発注した部品が国土交通省の認定を受けていない新潟中条倉庫や新潟ジャムコで検査され、認定を受けている立川工場で必要な検査が行われていなかった。

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source : 文藝春秋 2019年6月号

genre : ビジネス 企業