フォームなんて気にしなくていい

第5回  森守洋・プロゴルフコーチ

森 守洋 プロゴルフコーチ
エンタメ スポーツ

クラブが主で体は従。プロ再生請負人が提唱する“原理原則”とは?

 ゴルフには今も昔も変わらない「原理原則」がある、というのが私の持論です。トンカチで釘を打ったり、布団叩きをするように、自然に“棒を振る”動作をすれば、クラブは正しく挙動し強いボールが飛び出す。クラブが主で体は従なんです。でも、みんな細かい体の動きばかり気にするからドロ沼にハマる。

森守洋さん ©文藝春秋

 私がアマチュアのレッスンを始めたのは二十数年前です。若い頃はツアープロを目指していたのですが、なかなか予選通過も難しく、お金もないため日銭を稼ごうと平塚のパチンコ屋さんに通う日々でした。その中で週2日だけ、近くの練習場で1人2000円で教えていたんです。クセがすごいフォームの人はたくさんいましたが、私は体の動きは直しません。それでもみんな上手くなって帰っていく。それが口コミで拡がって、平塚の練習場に来るお客様は夜のレッスンだけで30人になりました。

 そんなある日、有名な女子プロがやって来たんです。竹末裕美プロでした。2003年、プロデビュー直後に優勝した天才肌のプレイヤーでしたが、スランプになってシード落ちして、平塚のパチンコ店まで来た。05年のことでした。そこから彼女は頑張って、4年後にシード復活。それを聞きつけて今度は原江里菜プロが来た。彼女は15年に7年ぶりに復活の2勝目を挙げました。その後、香妻陣一朗プロ、堀琴音プロ、柏原明日架プロ、昨年からは堀奈津佳プロ(琴音の姉)、そして菅沼菜々プロもみました。

5月4日、パナソニック女子ゴルフに優勝した菅沼菜々選手(千葉・浜野GC) ©時事通信社

 強い選手ほど、何かを加えてより良くしようとする。でも、本当に必要なのは原理原則に立ち返ることなんです。当初、こっちゃん(堀琴音)は、「ピッチングウェッジでターフ(芝)を取ってみて」と言っても、30分ずっと芝を削れないほど、重症でした。体ばかりに意識が行ってクラブに意識が届かない。21年の初優勝まで3年かかりました。菅沼プロはスランプになってから割とすぐに来てくれたので、立ち直るのも早かった。今年5月のパナソニックオープンで復活の3勝目を飾ることができました。

©文藝春秋

 今の選手はみんな真剣に練習するし、尊敬の念しかありません。ただメンタル的にはリラックスも重要。ゴルフは元々スコットランドの羊飼いが棒で小石を転がして野ウサギの巣穴に入れる遊びから始まったと言われています。フォームの見た目にとらわれすぎず、気軽に目の前の一打を楽しむ感覚も大切なんです。

(取材・構成/松浦達也)

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source : 文藝春秋 2025年7月号

genre : エンタメ スポーツ