日本で初めてチェーン店制度を取り入れ、「東洋の製薬王」と呼ばれた星一(ほしはじめ)(1873~1951)は、星薬科大学の創始者でもあった。息子は作家の星新一。その娘で、星ライブラリ代表の星マリナさんが祖父について語る。
私の祖父の人生を、ごくショートショートに紹介するとこんな感じです。
1873(明治6)年に福島県いわき市の農家にうまれた星一は、『西国立志編』に感銘をうけ、アメリカで勉強して実業家になることを夢にみました。ところがサンフランシスコについた直後に、持ってきたお金をだましとられて一文無しに。

働きながらコロンビア大学にかよい、苦労して修士号を取得。31歳のときに日本にもどり、星製薬を創業します。鎮痛剤モルヒネの国産化に成功するほか、「ホシ胃腸薬」などが好調で大躍進するも、大正末期の政争にまきこまれ、政官財一体の妨害にあい破産。
政権交代後。台湾でキナ(マラリア特効薬の原料)を栽培し、ふたたび事業を軌道にのせるも、敗戦でその土地をうしない、東京の工場も空襲で大破。
戦後。接収をまぬがれていたペルーの所有地で、コカ(局所麻酔薬の原料)栽培などの事業再開をめざしますが、ペルーへむかう途中のアメリカで脳溢血にたおれ、77歳で急逝。
そして没後……。24歳だった息子・星新一が星製薬をひきつぐも、たてなおすことができずに会社を手ばなす結果となったのでした。
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source : 文藝春秋 2017年4月号

