映画監督の鈴木清順(1923〜2017)による映像表現は、独特の色彩感覚と様式美で「清順美学」と讃えられた。
映画プロデューサーの小椋悟氏(67)は、ヴェネツィア国際映画祭で「偉大なる巨匠に捧げるオマージュの盾」が贈られた『ピストルオペラ』、遺作となった『オペレッタ狸御殿』を製作し、公私ともに親しく交わった。
「小椋さん、いいものを作ろうとしすぎだ。ダメだよ」
鈴木清順監督に言われたこの言葉を、僕は座右の銘にしています。江角マキコさん主演で、殺し屋組織の内部抗争を描いた『ピストルオペラ』(2001年)の撮影中でした。僕はプロデューサーとしてまだ若かったし、父親ほどの年齢の清順さんとはウマが合って何でも言いやすかったので、ガーッとまくし立てたら、返されたのがこの言葉。

いいものを作ろうという姿勢が呪縛になって大げさに頑張りすぎると、感性が硬直化してしまう。そう言いたかったんだと思います。僕は「ああ、そうか。肩の力を抜いて、サボってもいいんだな」と楽になった。ご自分を「無思想無節操」と評していたのも、思想やイデオロギーが自由な感性を損ねてしまうという考え方だったんでしょうね。真の芸術家とはこういうものです。
打ち合わせが続いた時期は、週に2、3回は一緒に飲んでいました。どじょうが好きだったのは、いかにも十六代続いた江戸っ子らしい。
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