甘利俊一「実は英訳にチャットGPTを使ってます」

日本の顔 インタビュー

甘利 俊一 数理工学者
ライフ サイエンス ライフスタイル

伝統もルールもない自由な環境が、先駆的な人工知能研究を生んだ
 

※甘利俊一さんが登場したグラビア「日本の顔」もぜひご覧ください

「ついに、ここまできたか……」

 ChatGPTが世に登場した時、思わずそうつぶやかずにはいられませんでした。

 この60年ほどで、人工知能は爆発的に進歩しました。2024年には人工知能の研究に貢献したアメリカのプリンストン大学のジョン・ホップフィールド名誉教授と、カナダのトロント大学のジェフリー・ヒントン名誉教授がノーベル物理学賞を受賞しました。

 これを機に、私もメディアからたくさんの取材を依頼されるようになりました。というのも、彼らよりも10年ほど前に同等の理論を発表していたからです。私の研究が今の人工知能の基盤ともなっています。

ChatGPTも甘利氏の研究成果の延長上にある ⒸAFP=時事

 いま、開発されている人工知能には、深層学習という手法が欠かせません。ディープラーニングとも呼ばれ、人間が経験を通じて自然にパターンを学ぶ過程をコンピューター上で再現し、大量のデータから特徴を自動的に抽出、獲得する手法です。私は、世界で初めて深層学習のシミュレーションに着手していました。1967年には、深層学習の理論的な源流のひとつである「確率的勾配降下法」を論文で発表しました。ただ、その内容が「あまりに数学的で難しい」と言われただけで理解してもらえなかった。当時はほとんど反響もありませんでした。

 昨年の人工知能に関するノーベル物理学賞は1980年代以降の業績に絞られているので、私の業績は関係がありません。しかし、ノーベル賞が人工知能を評価したことや、身近に使えるサービスが登場したことなど、近年の発展は目を見張るほど。私もその一端を担えたかと思うと本当に感慨深いです。

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source : 文藝春秋 2025年8月号

genre : ライフ サイエンス ライフスタイル