九州弁にサングラス、黒のレスポール……カリスマ的人気を誇り、「ユー・メイ・ドリーム」や「レモンティー」などの名曲を残したロックバンド「シーナ&ロケッツ」のギタリスト・鮎川誠(1948〜2023)は、妻でボーカルのシーナとともにバンドマン人生を貫いた。長女の陽子氏が素顔の父を振り返る。
うちのお父さん、鮎川誠は、ギタリストであり、強烈な個性の人でした。
まずものをすごく大切にする人で、黒のギブソンレスポールカスタム’69を生涯ずーっと弾き続けました。世の中にギターは星の数ほどあるけれど、たったひとつのギターを弾き続けました。このギターは、ライブでも、レコーディングも、取材の時も、いつもどんな時も一緒で「ブラックビューティー」と呼んでいました。年が経過するごとに、塗料が剥げたり、錆びついていったりして、それでも大切に弾いていたギター。まるでもう一人のお父さんのようで、一心同体でした。

また、ロンドンのポートベローで買った革のコートや革の帽子、革のバッグやジャケットなど、愛用しているものは大切にして何十年も着ていました(それなのにかっこいいのだ)。そしてやぶれたところがあったら、いつも自分で縫って直していました。縫っているのを見つけてわたしが途中から手伝うこともよくありました。お父さん本当は縫い物とかはあまり得意ではないのに一生懸命やろうとしているのでかわいいなと思ったり……。
お父さんの変わっていたところはいろいろあるんですが、頭がすごくよくて、記憶力がもの凄かった。いつどこでライブがあったときに誰が来てくれたとか、具体的に覚えているんです。何年の何月何日のライブとかもすらすらっと言ったりしました。実はいちど知能指数が135ときいたことがあり、わたしはびっくりして「ブライアン・ジョーンズと一緒じゃん! ずるい!!」と言ったこともあります。
友達は、「学生時代、勉強をちゃんとやっているそぶりはなかったのに、学校の成績は学年トップで、通知表を見てひっくりかえりそうになった」と言っていました。そしてバンドに夢中。友達の農家の納屋でバンドの練習をしたりしていたそうです。ビートルズやストーンズのレコードを貸し借りして、ギターに夢中になっていたそうです。

「あの時代、耳にかぶさるほど髪を長くしていたり、ブーツを履いていたのはまこちゃんだけだったよー」とも教えてもらいました。古着を探してくるのが上手で、トレンチコートにブーツ、そして長髪。お父さんは、学生時代からすでに、人目を気にせず、自分の気に入った格好をしていたのです。学生時代の写真を見て面白かったのは、駅のホームのようなところで撮った写真で、周りの人たちがみんな夏服なのに、お父さんだけがコートを着て1人だけ暑苦しい格好をしていたこと!
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