偉大な業績を残し、世を去った5名の人生を振り返る追悼コラム
★大村幸弘

考古学者の大村幸弘(おおむらさちひろ)はヒッタイト帝国の謎に魅せられてトルコで発掘を続け、数々の新発見をもたらした。
2017(平成29)年、ヒッタイトの時代より前の地層から鉄を発見したと発表し、世界的な考古学的発見として話題となる。独自の遺跡発掘を始めてから32年目のことだった。「これまでの仮説を大きく覆すことになる可能性がでてきました」。
1946(昭和21)年、岩手県盛岡市に生まれる。家族が旧満州から引き揚げ帰郷した3日目に大村が誕生したという。高校時代に古本屋で見つけたC・W・ツェーラムの『狭い谷 黒い山 ヒッタイト帝国の秘密』を読んで感動。鉄を生み出して帝国を建設しながら忽然と消えたヒッタイトへの憧れを抱いた。
早稲田大学第一文学部に入学してからもヒッタイトへの熱は高まるばかりで、卒業後、トルコへの留学試験を受けてアンカラ大学に入学する。まだ不十分だったトルコ語も街に出て体当たりで覚えた。いくつもの遺跡発掘に参加しながらヒッタイトと鉄の関係を探求し続ける。
81年にいったん帰国して、『鉄を生み出した帝国 ヒッタイト発掘』を刊行。多くの読者を得て講談社ノンフィクション賞を受賞する。この年、三笠宮崇仁親王が総裁を務める中近東文化センターに入って、崇仁親王の支援のもとに86年からトルコのカマン・カレホユック遺跡の発掘調査を始めた。
同遺跡はいくつもの時代の層が重なっていて、基層は5500年前まで達すると推測された。大村はこの遺跡を掘り進み多くの層からなる「文化編年」の作成を目指した。
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