昨年から続いたコメ価格の高騰は、「令和のコメ騒動」と呼ばれる事態を招いた。
遅ればせながら政府は備蓄米の大量放出に踏み切り、小売り各社なども迅速、大量かつ極めて安価で販売したことで、高騰した価格にもブレーキがかかったように見える。とはいえ、消費者のみならず、生産者や流通といったコメに関わる全ての人にも、戸惑いや不安がぬぐい切れない日が続く。

「困りますよ、高くて」「せめて5キロあたり2000円台でないと」。これは連日報道されてきた消費者の偽らざる声だが、この報道にはある視点が不十分だと感じられてならない。
それは、田んぼでコメを作り続ける生産者の声だ。
私たち生産者から見れば、この現象は単なる「価格の問題」ではない。もっと根深い、そして国家の根幹に関わる「食糧政策」の問題だ。
私はバレーボールの世界に長らく身を置き、コメ作りに携わってまだ足掛け4年の新規就農者であるが、この仕事は、スポーツの厳しさを超えるほど、過酷な世界だと実感する。

地球温暖化の影響で猛暑が続き、コメの品質は不安定になった。燃料費や肥料代も高騰し、農業機械の維持にも莫大なコストがかかる。高齢化が進み、人手は減り、担い手の確保もままならない。それでも、田に立ち、泥にまみれ、自然と向き合ってコメを作るのは、「日本人の食卓を守り、感動を生むコメを育む」という誇りがあるからだ。
有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。
記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!
初回登録は初月300円
月額プラン
初回登録は初月300円・1ヶ月更新
1,200円/月
初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。
年額プラン
10,800円一括払い・1年更新
900円/月
1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き
電子版+雑誌プラン
18,000円一括払い・1年更新
1,500円/月
※1年分一括のお支払いとなります
※トートバッグ付き
有料会員になると…
日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事が読み放題!
- 最新記事が発売前に読める
- 編集長による記事解説ニュースレターを配信
- 過去10年7,000本以上の記事アーカイブが読み放題
- 塩野七生・藤原正彦…「名物連載」も一気に読める
- 電子版オリジナル記事が読める
source : 文藝春秋 2025年9月号

