コメ生産者の声

中垣内 祐一 元バレーボール日本代表
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 昨年から続いたコメ価格の高騰は、「令和のコメ騒動」と呼ばれる事態を招いた。

 遅ればせながら政府は備蓄米の大量放出に踏み切り、小売り各社なども迅速、大量かつ極めて安価で販売したことで、高騰した価格にもブレーキがかかったように見える。とはいえ、消費者のみならず、生産者や流通といったコメに関わる全ての人にも、戸惑いや不安がぬぐい切れない日が続く。

中垣内祐一 ©福井工業大学

「困りますよ、高くて」「せめて5キロあたり2000円台でないと」。これは連日報道されてきた消費者の偽らざる声だが、この報道にはある視点が不十分だと感じられてならない。

 それは、田んぼでコメを作り続ける生産者の声だ。

 私たち生産者から見れば、この現象は単なる「価格の問題」ではない。もっと根深い、そして国家の根幹に関わる「食糧政策」の問題だ。

 私はバレーボールの世界に長らく身を置き、コメ作りに携わってまだ足掛け4年の新規就農者であるが、この仕事は、スポーツの厳しさを超えるほど、過酷な世界だと実感する。

教授を務める福井工業大学では体育の授業でバレーを指導 ©福井工業大学

 地球温暖化の影響で猛暑が続き、コメの品質は不安定になった。燃料費や肥料代も高騰し、農業機械の維持にも莫大なコストがかかる。高齢化が進み、人手は減り、担い手の確保もままならない。それでも、田に立ち、泥にまみれ、自然と向き合ってコメを作るのは、「日本人の食卓を守り、感動を生むコメを育む」という誇りがあるからだ。

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source : 文藝春秋 2025年9月号

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