7年の禁酒生活を終えて

立川 吉笑 落語家
ライフ 芸能 ライフスタイル

 皆さんはTBSラジオで30年続いた朝の看板番組「大沢悠里のゆうゆうワイド」の制作陣に向かって「己のスタイルを変えてまで別に出演したくありません」と啖呵を切ったことはあるだろうか? 私はある。「それだったら本当に出演は無しになりますよ?」と詰め寄られた際に、返す刀で「こっちから願い下げだ!」と吐き捨てたことはあるだろうか? 私はある。今や笑点メンバーとなられた現代を代表する落語家の1人である春風亭一之輔師匠の後援会長に向かって「後援会なんか作って誰かに後押ししてもらう時点で芸人としてはダサくないですか?」と暴言を吐いたことはあるだろうか? 私はある。

 これらは全て酒の席での話だ。1年365日、酒を飲まない日の方が少なかったし、飲んだら飲んだ分だけしっかり酒に飲まれる私は、目上であればあるほど噛み付いてしまう厄介な酒癖の持ち主で、とにかく酒の上でのトラブルが絶えなかった。そんな私が禁酒を始めると宣言した際、よく知る者であればあるほど「どうせ続くはずは無い」とまともに取り合ってはくれなかった。でも結果的にはなんと2586日、7年以上に及ぶ禁酒に成功した。きっかけは2018年5月10日の出来事。いつものように酔っ払った私は、なんてことない段差につまずき強(したた)かに転倒して右足首の骨を3本折った。全治2ヶ月。それまでも漠然と酒を止めなくちゃなぁと思っていた私は、治療に伴って強制的に設けられた2ヶ月間の禁酒生活を助走にそのまま酒を止めてみることにした。近しい仲間が「素晴らしい芸を持っているのだから、本当に酒を控えて芸道に邁進した方がいい」と力説してくれたり、また別の仲間は願掛けで有名な小野照崎神社に連れて行ってくれて「芸の向上のために一緒に断ち物をしよう」と誘ってくれた。その場で私は「真打に昇進するまでお酒は飲みません」と神様に誓って、絵馬にもそう書いた。隣で一緒に願掛けしている仲間が「この夏、つけ麺は食べません」と書いているのを見て、ちょっと誓約が緩くないかとモヤモヤしたことを覚えている。

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source : 文藝春秋 2025年10月号

genre : ライフ 芸能 ライフスタイル