9月最後の週末、南北戦争の激戦地として知られるペンシルベニア州ゲティスバーグを訪れた。ここで、第2次世界大戦中に沖縄戦を戦った米兵の戦友会が開かれたためだ。集まったのは、沖縄県古宇利島の沖合に沈む米海軍の掃海艇「エモンズ」という船の乗組員4人と、遺族や子孫たちだ。
ホテルのロビーに着くと、何組かの家族が私を見つけて「元気だった?」と声をかけてきた。会長のアーマンド・ジョリーさん(97)は、「待っていたよ」と、抱きしめてくれた。
1945年4月6日。エモンズは5機の特攻機の攻撃を受けて炎上し、乗組員約250人のうち60人が死んだ。沖縄戦を戦った米兵たちの戦友会に、日本人の私がひとり加わるようになったきっかけは、9年前の夏にさかのぼる。
2010年夏、沖縄に滞在していた私は、知り合いのダイバーから突然の誘いを受けた。「明日、エモンズという沈没船に潜るから、一緒に行かないか」。それが何の船なのかすら知らぬまま、私は「ようやくこの日が来た」と興奮したまま眠りについた。
その数年前、私は「シャドウ・ダイバー」(ロバート・カーソン著)というノンフィクションを読み、衝撃を受けた。この本は、アメリカの名も無いダイバーたちが、東海岸沖に沈んでいた謎のドイツの潜水艦「Uボート」の正体を突き止めようと命をかけて、歴史を書き換えていく物語だ。
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source : 文藝春秋 2019年12月号