【MOF 金属有機構造体】多孔性材料で空気から資源を取り出せ 京都大学特別教授・北川進インタビュー

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緑 慎也 サイエンスジャーナリスト
ニュース サイエンス

京都大学特別教授の北川進氏が2025年のノーベル化学賞を受賞することが決まりました。北川氏が長年にわたり研究してきた多孔性材料は「MOF(金属有機構造体)」、または「PCP(多孔性配位高分子)」と呼ばれ、資源の貯蔵・分離での活用が注目されています。北川氏が、自身の研究成果を語ったインタビュー記事を再掲します(初出:文藝春秋2013年9月号)。

 京都大学物質―細胞統合システム拠点の北川進教授が1997年に世界ではじめて開発した「多孔性材料」は、しばしばジャングルジムにたとえられる。あの遊具のように、多孔性材料には(その名の通り)たくさんの孔(あな)がある。孔の1辺当たりの大きさは約1ナノメートル(10のマイナス9乗メートル)。この小さな孔を持つ骨格がいくつも立体的に組みあがって、100マイクロメートル(10のマイナス4乗メートル)ほどの結晶ができる。そこに含まれる孔の数はなんと約1000兆個。これが今、次世代の産業界を担う、高機能な材料として注目を集めているのだ。

京都大学特別教授の北川進氏は、2025年のノーベル化学賞を受賞 ©時事通信社

 近年では、この分野の関連論文は年間2000本以上も発表されている(北川は2010年にトムソン・ロイター引用栄誉賞を受賞)。世界中で激しい研究競争が繰り広げられているのだ。

 そんな多孔性材料だが、作り方は拍子抜けするほど簡単。

「金属イオンと有機分子をフラスコに入れて数秒混ぜ、濾過したらもうできあがりです。熱を加える必要もない。乳鉢に材料を入れて、すりこ木でゴリゴリこすってもいい。マイクロ波も使えるので、電子レンジでチーンという手もある。これなら主婦、あるいは主夫でも難なく作れますよ。金属イオン入りのスプレーと、有機物入りのスプレーを1本ずつ左右の手に持って、壁紙にシュッ、シュッと吹き付けてもできます」

 要するに金属イオン(銅、亜鉛、アルミニウム、クロム、マンガン、ニッケルなど)と有機分子を「混ぜるだけ」なのだ。

 といっても、金属イオンと有機分子の選び方は無数にあり、どれとどれをつなげるかによって、できあがる材料の孔の大きさ、強靱さなどの性質が変わってくる。どんな性質を持たせるか、その目的に合わせて、素材を選び、材料の骨組みを合理的に設計するのだ。

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source : 文藝春秋 2013年9月号 多孔性材料 空気から資源を取り出せ

genre : ニュース サイエンス