有権者から高い支持を集め、米トランプ大統領との関係も上々に滑り出した高市早苗政権。だが新政権にとって無視できないもう一つの「当事者」がいる。世界の金融マーケットである。
高市政権は積極財政で、日本経済の再興を目指す。だが言わずもがな、日本は先進国としては突出した金額の公的債務を抱える。この状況でさらに積極財政に乗り出すのであれば、「サナエノミクス」を世界のマーケットは歓迎するのだろうか。
株価や円相場を左右する市場の見方を、ヘッジファンド・マネージャーの塚口直史氏に聞いた。塚口氏はリーマンショック時、資産運用世界最大手の米ブラックロックで最も高いリターンを叩き出した「伝説のファンドマネージャー」である。現在は独立系の投資顧問会社Plus Plus Group代表として、欧州・中東を地盤に機関投資家の資金を運用している。“ヘッジファンドのサムライ”塚口氏が語るマーケットの本音とは――。(インタビューは10月30日。取材・構成:杉本りうこ)
世界の金融マーケットはどう見ているのか
――高市政権の発足から日本で株高が進んでいます。日経平均株価は5万円を突破する局面もありましたが、これをどう評価していますか。
年初の日経平均は3万9000円程度でしたから、ざっと30%上昇したわけです。これだけの株価上昇を合理的に説明できるような大きな変化が、日本の実体経済に果たしてあったでしょうか。ちょっと思い当たりませんよね。

世界の多極化が進み、地政学的な思惑から日本にお金が流入している側面はあります。しかしそれ以上に大きな要因は円安です。世界のマーケット参加者は「新政権下の日本ではどうやら利上げが進まないようだ」と受け止めています。利上げをやらなければ円安になります。円安になると、大手製造業が主な構成銘柄である日経平均は上がります。そういう循環が日経平均5万円を生んでいます。
――高市首相の「政府と日銀は一体であるべき」という発言が、金融正常化を図ろうとしてきた植田日銀の方針を修正すると受け止められている?
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