「『日本の買収王』と『台湾の買収王』が、まさに今、ガチンコで企業買収合戦を繰り広げているんです!」
ゴールデンウィーク半ばのある日、ジャーナリストの杉本りうこさんから興奮覚めやらぬメールが届きました。聞けば、世界的シェアを誇る温度センサーメーカー「芝浦電子」が、台湾の電子部品大手「ヤゲオ(国巨)」から買収を仕掛けられている。それに対抗して、日本の電子部品大手「ミネベアミツミ」がホワイトナイト(友好的な買収者)として名乗りを上げたというのです。
さらに興味深いのは、ヤゲオのピエール・チェン会長は台湾で「併購王(M&A王)」として知られる存在で、対するミネベアミツミの貝沼由久会長兼CEOも、「西の永守(ニデック)、東の貝沼」と並び称されるほどのM&A巧者であること。まさに“買収王vs買収王”、です。
正直に言えば、当初私は「日本の技術が海外に流出するなんてとんでもない」と反射的に構えていました。しかし、合計5時間にもおよぶチェン会長のインタビューを通じて、その見方は徐々に変わっていきました。チェン会長の言葉には、日本の技術や人材への敬意と、企業成長への強い意志、過去の買収実績に基づく確かな自信が滲んでいたからです。

「我々は過去に傾きかけた日本企業を買収し、飛躍させた実績があります。我々が芝浦電子を買収すれば、その技術を最大限に活かすことができる。我々は日本の敵ではありません」
また、チェン会長の生い立ちを聞くと、強欲な資本家とのイメージとは程遠いものでした。
「裕福な家庭ではなかったので、学生時代はプログラミングのバイトのほか、DJのバイトもしていました。大学の同級生は多くがアメリカに留学に行っていましたが、私は寂しがる祖母を置いて行くことができず、台湾にとどまって起業したんです。台湾には『天公疼憨人(天は愚者を憐れむ)』ということわざがあります。家族のためにアメリカに行かなかった私を『愚者』と言う人もいましたが、その選択があったからこそ今の私があるんです」
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