『YABUNONAKA−ヤブノナカ−』金原ひとみ/文藝春秋
『ふたり暮らしの「女性」史』伊藤春奈/講談社
『社会学者が子育て本を読んで考えたこと』貴戸理恵/慶應義塾大学出版会
私自身が母となり妻となって初めて迎えた年。家族の一員となって過ごすこの社会は実に息苦しく、正解などない中で正解を求められ続ける場所だった。同じ屋根の下に暮す者とすら圧倒的に分かり合えていない感覚は、孤独を深める。
文芸業界での性加害の告発をめぐる騒動を「被害者」や「加害者」、その家族ら多数の視点で描いた金原ひとみ『YABUNONAKA―ヤブノナカ―』は、その孤独が少なくとも自分の異常やミスによるものではないと思わせてくれる小説だ。視点人物たちが見ている世界は別の者にとっては容易く想像などできないほどそれぞれ別物で、しかも世界も人物も変わっていく。「時代は唐突に人を裏切り、蹴落としていく」という残酷な実感を共有しながらも、死なずに生きていくために必要な態度は、見えている絶望的な世界が一つの可能性に過ぎないと実感し続けることでしかない。中年にも大学生にも小説家にも、女性にも男性にも極限まで寄り添って描かれた物語はこの先何度でも読み返したいものだ。

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source : 文藝春秋 2026年1月号

