「元」風俗嬢は死ぬまでやめられない
性にまつわる仕事をする女性が、どうしてその職を選ぶに至ったのか、に迫った本は世に多く存在する。ジャーナリストの多くは現役の風俗嬢やAV女優にインタビューするわけだから、その内容は自ずと風俗の仕事をする前としている最中の半生に終始するのだ。本書の著者が言うように「風俗嬢として生きる期間よりも、『元』風俗嬢として生きる期間の方が、圧倒的に長い」にもかかわらず、風俗やAVをやめた後の人生に焦点を当てた本や記事はとても少ない。単純に取材するのが難しいのだ。「元」風俗嬢たちはそうだと明かして生きている人ばかりではない。

性風俗や売春にかかわる女性たちの無料相談窓口を長年運営してきた著者はその経験を活かし、かつて性風俗に従事していた女性たちへの聞き取り調査をおこなった。やめた後のキャリア形成だけでなく、当初風俗を選んだきっかけ、やめるに至った経緯、今現在の悩みなどが網羅的に語られる。「ほぼ源氏名で仕事をしてきたので、自分の名前で呼ばれて仕事をして、やりがいを感じたい」と、30代で介護の仕事に転職した者もいれば、結婚して理容師として働きながら、夫の失業を機に20代前半で働いていたマットヘルスの仕事に30代で再び就いた者もいる。性風俗経験も活かしながら海外の大学院でフェミニズムなどを研究し、私生活では「セックスがどうでもいい」と感じている者もいる。
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source : 文藝春秋 2025年7月号