『関係のないこと』上田岳弘/新潮社
『他人の手帳は「密」の味』志良堂正史/小学館新書
『プロレタリア文学セレクション』荒木優太編/平凡社ライブラリー
文学が社会に戻ってきた年だった。むろん、売上とかの話じゃない。
短編5つを収めた『関係のないこと』のうち、2つは新型コロナウイルス禍を背景にしたバーが舞台。店で語られる人生のどこまでが事実か、読者にはわからない。
表題作「関係のないこと」で、主人公の先輩は途中から「天井のない監獄」の話題にとり憑かれ、心身の平衡を崩す。ガザ紛争に注がれる世界の視線に同一化するあまり、個人の立場で現実に線を引けなくなる。

疫病や戦争など、関心を持たないことは「ありえない」とされる公の領域が生活を埋め尽くし、ファクト以外を「語るな」とされて、私的な感じ方は表に出すのを禁じられる。そんな時代は文学を足蹴にして、いま振り返れば怪しい「科学もどき」の解説ばかりを、垂れ流した。
有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。
記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!
初回登録は初月300円
月額プラン
初回登録は初月300円・1ヶ月更新
1,200円/月
初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。
年額プラン
10,800円一括払い・1年更新
900円/月
1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き
電子版+雑誌プラン
18,000円一括払い・1年更新
1,500円/月
※1年分一括のお支払いとなります
※トートバッグ付き
有料会員になると…
日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事が読み放題!
- 最新記事が発売前に読める
- 編集長による記事解説ニュースレターを配信
- 過去10年7,000本以上の記事アーカイブが読み放題
- 塩野七生・藤原正彦…「名物連載」も一気に読める
- 電子版オリジナル記事が読める
source : 文藝春秋 2026年1月号

