「自分は被曝2世だけど、自分たちの世代は差別もあって、時にこの言葉は『差別用語』でもあったから、今も『被曝2世』を自称するのはためらいもあるなぁ」
同郷の人とメシを食っていると、ふとそうした言葉を聞きました。その人は私と同じ広島出身。40歳以上年齢は違いますが、同郷の縁でつきあいを持つようになりました。月刊誌に異動になった自分の近況を話しながら、お盆の帰省が話題になったときのことです。

70過ぎた大先輩と、30半ばにさしかかる自分。年齢差は倍あります。ただ、同じ町で暮らしていた経験があるせいか、地元の話をしているぶんには、これまでほとんど年齢差を感じることはありませんでした。
それだけに、この言葉は妙に耳に残りました。被曝3世の私にとって、被曝者差別の歴史は知っていても、この先輩から差別の実体験の話を直接聞いたこともあるのに、ここまで切実で生々しい歴史ではなかったからです。
今回、「令和の天皇論」では、昭和50年代に生まれた気鋭の4名が、縦横無尽に戦争、天皇、そして日本について語り合っています。

このなかで、座談会参加者の一人、先崎彰容氏がこう述べていたことが印象的でした。
〈言論界では「若手」と評されることもある我々4人は、いずれも昭和生まれで〝昭和の時代の空気〟を体感しています。ところが、大学で講義をしていると、1945年8月15日が終戦の日だと知っている学生は2割ほど。それほど大きな歴史の断絶がある。
「天皇の戦争責任」に関して意見は正反対でも、かつてなら、この問いが成り立つ時代状況を皆が共有していた。議論の初めから恐縮ですが、今日、議論の前提となる時代感覚が失われているなかで「戦争」や「天皇」を論じても言葉だけが独り歩きしてしまうことを危惧します〉
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